ゴウは、フォックスコンを一代でEMS(電子機器受託生産)の世界最大手に育て上げた。昨年6月には、2020年1月の総統選に国民党から出馬することを目指して董事長を退任したが、国民党の公認候補には高雄市長の韓国瑜(Han Kuo-yu)が選出された。
68歳のゴウは立志伝中の人物で、推定資産は66億ドル(約7140億円)とも言われる。その彼をもってしても、総統候補の座を勝ち取るのは至難の業とされた。
「ゴウは台湾における有権者の構成を見誤り、社会における影響力や人気度を過剰評価したのだろう」と淡江大学のAlexander Huang教授は指摘する。
ゴウは45年前に台北でフォックスコンを設立して以来、ほぼ1人で会社をコントロールしてきた。同社はアップルをはじめ世界的なメーカーの主要サプライヤーとなり、従業員数は100万人規模にまで成長した。
ゴウは2017年に米国でトランプ大統領と面会し、2020年末までにウィスコンシン州に液晶パネル工場を建設することで合意した。彼は今年4月に、「媽祖(航海・漁業の守護神)に促された」と述べて、台湾総統選への出馬を目指す考えを明らかにした。しかし、7月に国民党の予備選に敗れると、その後は無所属候補として出馬した場合の勝算を調査していたと見られる。
ゴウは、台北市長や国民党の国会議長との連携を模索していたが、無所属候補者の届け出期限は9月17日となっていた。
国民党や与党である民主進歩党の支援がない候補は苦戦することが予想される。シンクタンクChunghua 21st CenturyのCEO、Joanna Leiによると、有権者の50〜60%は2大政党に投票するという。
「当選確率は2大政党の候補者の方がサードパーティの候補者よりも格段に高い」とLeiは話した。