ビジネス

2019.09.20

WeWorkと自治体での世界初の挑戦。神戸市が2拠点で抱く「思惑」とは

8月30日、WeWork丸の内北口で行われた記者発表

東京だけでなく、日本各地でコワーキングスペースが増えている。

神戸市では、昨年以降、神戸新聞社が運営する「120 WORKPLACE KOBE」、チャットワークが六甲山北側の郊外に整備した「.me(ドットミー)」、長田区発祥の婦人靴メーカーによる「WAY OUT」、老舗デザイン事務所による「ON PAPER」、アパマングループが全国展開する「fabbit神戸三宮」が、次々とオープンした。多彩な事業者が運営しているためか、見た目や雰囲気は、それぞれ異なっている。

一方で、米国生まれの「WeWork」は、「コミュニティ型ワークスペース」を看板に、昨年2月に日本に上陸すると、あっと言う間に東京都内で14カ所、地方では横浜、大阪、名古屋、福岡へと展開した。大企業からスタートアップまで、多様な規模や業種の企業から歓迎され、空きを待つ会社が数珠つなぎの拠点も多い。

WeWorkに入ることで助成金を受け取れる

そんな中、神戸で初のWeWork拠点、「WeWork三宮プラザEast」が11月にオープンする。そして、WeWorkが東京や海外から成長企業を呼び込むマグネットとなることに注目した神戸市は、WeWork Japanと共同で「ビジネス支援プログラム」を創設したと発表した。


WeWork Japanとの合同記者会見で説明する久元喜造市長(8月30日、WeWork丸の内北口)

プログラムは、1. スタートアップ企業、2. 新事業開発・イノベーションなどを担当する本社などの部署、3. 外国・外資系企業、をターゲットとしている。これらの企業が三宮のWeWorkに入る際に、神戸市から助成金を受け取ることができ、WeWorkのメンバーシップ料金も割り引かれる。自治体の助成金とシェアオフィスの割引をパッケージにしたプログラムは、国内で初めてであり、世界でも類をみない。

実は、この枠組みをつくる際には大きな問題があった。というのは、WeWorkに入居するのと、ビルの一室を借りるのでは、オフィスをつくるという点では変わらないが、会員制であるWeWorkの契約では、通常の賃貸借契約と異なり「利用する人数」に基づいて料金が決まるからだ。

しかし、自治体の補助制度は「賃貸面積」が補助やその金額の要件となる。それゆえ、契約書に賃借面積が書かれていないWeWorkへのメンバーは、従来型の自治体の補助要件に当てはまらないのだ。

面積という誰が見ても分かるモノから補助額を計算したいのは理解できるが、経済を活性化し、イノベーションを生み出すには、面積が大事なわけではない。その場所で活動するヒトに注目すべきなのに、そもそも本末転倒ではないか……。そこで、神戸市は、契約上の会員数から補助金額を算定することにしたのだ。
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文=多名部重則

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