英離脱延期を巡る「政治ショー」から目が離せない理由

ボリス・ジョンソン英首相(Photo by Jon Super - WPA Pool/Getty Images)

英国の株式市場はますます明確に、同国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)の可能性が低くなっていることを示しているように思われる。

ブレグジットの是非を問う国民投票が行われたとき、筆者はフォーブスへの寄稿の中で、「離脱は実現しないだろう」と書いた。それは、簡単な計算から出した答えだった。英議会はおよそ3対1で、圧倒的に離脱に反対だったのだ。今では次の選挙で議会から追い出されることを恐れ、大半の議員が大声では言わなくなっているが、それが彼らの本当の立場だ。

ブレグジットを崖っぷちまで追い込み、奈落の底に突き落とす目前に近づくまでにこれほど長い時間がかかったことは、全く恥ずべきことだ。このプロセスに関わってきた臆病者たちのおかげで、英国に不要な損害がもたらされたことも、恥ずべきことだ。

これらは、英国の政治システムが非常に脆弱であること明確に示している。英国がすでに受けた、そしてこれから受ける可能性がある損傷は、最終的な結果がどのようなものになろうと、修復までに長い時間を必要とするだろう。

現政権が制度を混乱させるような乱暴な行動を取るという憲政の危機を引き起こさなければ、今ブレグジットを実現させることはできない。政府が実際にそうした行動に出ることはあり得たが、その可能性もますます薄れてきている。

ボリス・ジョンソン首相が10月末にEUからの「合意なき離脱」を確実に実現できる方法を見つけ出すことができなければ、ブレグジットは絶対に、神の行為によってしか実現されないものになるだろう。

10月末に英国にある選択肢は、「ブレグジットの死」と「合意なきブレグジット」だけだ。そして、株式市場は現在、前者を予想しているとみられる。

企業買収が「ブーム」に?

ここで、できれば政治を忘れて考えてみたい。投資家はこれから、どのような進路を取るべきだろうか?

合意なき離脱を実現すれば、それによって国のシステムが受ける衝撃を和らげるために、英政府は劇的な行動を取らなければならないだろう。それは、株式市場が受ける打撃を和らげることになる。

また、離脱によってポンドは下落するとみられる。それにより、ロンドン市場で取引される多くの国際企業の株価は、各国の水準と比べて信じられないほど安値になる。ただ、それらの企業のばかばかしいほど高い配当利回りだけでも、ポンド安の影響は基本的に、ある程度は抑えられる。さらに、これらの企業を買収する側は、多額の資金を節約することができる。英国では、買収ブームが起きようとしている。

合意なき離脱は、英国市場の国際優良株の株価を、痛みを感じるほどに値下がりさせることになるだろう。さらに、英国市場はブレグジットを巡る懸念から、すでに各国市場に比べ、大幅にアンダーパフォームしている。

こうしたことが、離脱延期の可能性が高まることで、市場が反発する理由だ。合意なき離脱の回避がロンドン株価指数の上昇を妨げるだけだと考える人はいるだろうか──そうは思えない。

全てが台無しになるのかどうか、それは政治家たちの肩にかかっている。世界が抱える悩みを一層大きくしているように見える英議会の次の「空中サーカス」から、目を離してはいけない。

編集=木内涼子

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