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「セリーナ・ベンチャーズが力を注ぐべきはシード投資」

現代のアスリートはかつてなく裕福になっている。高騰するスポーツ中継の放映権料、その恩恵はアスリートにも降り注ぐ。世界のアスリート長者番付50位までの合計収入は、15年前は10億ドルに過ぎなかったが、昨年は26億ドルに達した。

こうした新たな収入を投資にまわそうとするアスリートは、セリーナ以前にも存在した。NBAだけを見ても、レブロン・ジェームズ、ステフィン・カリー、ケビン・デュラントはいずれもメディア企業を立ち上げ、デュラントとアンドレ・イグダーラ、カーメロ・アンソニーはアクティブなベンチャーキャピタリストとして活躍している。

だが、セリーナは、彼女自身を唯一の指針とした投資を行っているという点で、他の投資家と一線を画す。

セリーナは、セリーナ・ベンチャーズを設立する何年も前に、あるスタートアップに投資し、最終的に25万ドルを失った経験がある。このときの反省をもとに、彼女はその後、初期段階から企業を育成することに力を注いできた。

「その失敗から、過大な投資をしてはいけないという教訓を得ました。と同時に、自分はシード投資が好きなのだということもわかったんです」

実際、セリーナ・ベンチャーズを通じて彼女が出資した34社のうち、4分の3以上がシードラウンドでの投資である。

「こうした企業と関わることは楽しい。ギャンブルはしません。ですが、セリーナ・ベンチャーズが力を注ぐべきはシード投資だと感じています」

もちろんシード投資はリスクが高い。しかし、セリーナを支えるメンターチームは強固だ。セリーナと共にサーベイモンキーの取締役会に名を連ねる、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ。アンドリーセン・ホロウィッツのクリス・ライオンズ。

そして最も大きな存在は、夫であるアレクシス・オハニアンだ。オハニアンは、ソーシャルブックマークサイトの「レディット(Reddit)」の創業者であり、5億ドル規模のベンチャーファンド「イニシャライズドキャピタル」の運用も行っている。

「アレクシスのことを本当に頼りにしています」とセリーナは言う。ふたりが出会ったのは15年だが、その時、セリーナはレディットの名前すら聞いたことがなく、オハニアンもテニスについてほとんど知らなかった。しかし、向上心が2人を結びつけた。

「彼女はあらゆることに一流であろうとします」、と語るオハニアン自身も、推定7000万ドルの資産を保有している。

オハニアンのイニシャライズドキャピタルはIT系企業にターゲットを絞り、インスタカートやパトレオンへの投資で成功を収めてきた。セリーナもオハニアンの投資から多くのことを学んでいる。

夕食の食材を週に一度宅配してくれるゴブルや、手数料なしでアフリカに送金できるサービスを提供しているウェーブなど、イニシャライズドとセリーナ・ベンチャーズが共同で投資したケースもある。

(後編に続く)

文=カート・バーデンハウゼン 翻訳=松永宏明 編集=杉岡 藍

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