では、街中でよく見かけるそんな外食のメガチェーンのトップは、自社メニューをどのように考え、展開させようとしているのか。また、実際に自ら自社の商品を食べているのか。そんなささやかな疑問からこの連続インタビューの企画は始まった。
聞き手は、あの伝説のグルメ番組「料理の鉄人」にも関わったテレビディレクターであり演出家であり、同人誌「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」発行人も務める「食べ方学会」会長の市島晃生。マスコミの世界で、365日、苛酷な不規則勤務を強いられる業務をこなしながら、今日の仕事と明日の充実のため、「後悔しない今日の一食」を追求し続けてやまないベテランテレビマンだ。
第1回は、「モスフードサービス」中村栄輔社長。中央大学法学部卒業後、モスフードサービスに入社、主に法務畑を歩いた後、モスフードサービス関西社長も経験する。創業者の櫻田慧の甥である櫻田厚(当時の会長兼社長)の右腕を長らく務め、2016年に社長に就任した。ちなみに社長の交代は18年ぶりだった。
──今日はありがとうございます。まず、うかがいたいのは、社長ご自身で、モスの店舗に行かれることはありますか? また行かれた場合、席はどこに座るのでしょう?
もちろん行きますよ。場所は、一番隅っこの、お客様の邪魔にならないところです。あるいはカウンターの一番端とか、お手洗いに近いところ。店に行くと、お客様の声がつい耳に入ることもあります。キャンペーン商品の発売のときとかに、「おいしいなこれ」みたいな声が聞こえてくると、うれしいですよね。そういう現場でのナマの声は、営業企画本部長の頃からもうここ15年間、とても大切にしています。
──ものすごくお腹が空いていて、ガッツリ食べたい、というときは何を注文されますか?
私の定番は「モスチーズバーガー」に「オニポテセット」なのですが、より空腹なときは、それに「モスチキン」をプラスします。もしくは、「チリドッグ」を。もう1品食べたいな、というときには、ハンバーガーをもう1つでなく、目先を変えたくなりますね。
──ハンバーガーでなく、チキン、なのですね。そして、チリドック。それらを選ばれる理由はありますか?
モスチキンを選ぶのは、食材をチキンに変えられるだけでなく、ふわふわのバンズからカリカリのフライへと、食感も変えられるからです。そして、チリドッグを選ぶのは、ハンバーガーからホットドッグへと、パターンを変えたいからですね。それと、チリドッグにすることで、口の中の状況にちょっと辛めのアクセントをつけられます。