ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信


そうでなくても野球は、エンターテインメントとしてみると、観戦者の拘束時間が長く、それが他のスポーツと比べてハンディとなり、ファンが増えないという指摘があり、MLBは真剣にこれに取り組んでいる。

ALPBでも、前述のMLBのための試験プラグラムの一環で、攻守交替の時間を短縮化したり、キャッチャーがマウンドへ行ってピッチャーと話す時間を制限したりするなど、時間短縮に躍起になっている。今回、試験導入されたロボットアンパイアの効果で、時間短縮がさらに進み、他のスポーツとの競合に貢献することは間違いがない。

テクノロジーが野球を変えているのはロボットアンパイアだけではない。コンピューターシステムやデータ解析ツールを自軍のベンチに持ち込み、回帰分析で野球のコーチをする時代も来ているということを、タンパ・レイズのコーチ(統計士)を例にして、以前このコラムでも書いた。

実際、大リーグどころか、マイナーリーグの経験さえないというコーチが7人も、今年、MLBのチームに雇われてきていて、それは、ひとことで言えば、球団は経験よりもテクノロジーを買っているあらわれだと見られている。

「赤鬼」マニエルがコーチで復帰


(「赤鬼」チャーリー・マニエル / Getty Images)

ところが、MLBの球団によっては、そのトレンドとは真逆をいく球団もある。ニューヨーク・メッツは、今年、史上最年長のピッチングコーチを投入した。フィル・レーガンという男で、なんと82歳。最後にMLBでコーチをしたのは、なんと1999年ということだが、とにかくコーチングの経歴はメッツを中心にベテラン中のベテランだ。

ニューヨーク・メッツは、今季はぺナントレースの投手成績がひどく、6月20日にデーブ・エイランド投手コーチを解任して、経験豊富なレーガンを抜擢したのだ。結果、レーガンが投手コーチに就任してからチームはとても成績が良い。4.67の防御率だったものを、就任期間で3.95ににまで減らした。

同じことは、フィラデルフィア・フィリーズにも起こり、かつて日本のヤクルトや近鉄でも活躍したチャーリー・マニエルが、75歳で、この8月、不振で解任されたコーチの後任で、打撃コーチとして返り咲いた。

「赤鬼」とのニックネームのあった日本での本塁打王は、MLBの監督としても1000勝を挙げている。ワールドシリーズの優勝監督でもある。年齢のことさえ言わなければ、コーチングスタッフとしては特大のブランドを持つ。就任時、MLB全体で18位だった打撃力を、就任期間だけを見ると5位にまで上げてきている。

ウォール・ストリート・ジャーナルは「老獪こそあらたな武器」との見出しで、この2人の超ベテランのコーチが、短期間で具体的な成果をチームにもたらしたと報じている。そして、野球界があらためて「数値化できない経験の価値」に驚いているとも伝えている。

テクノロジーか、それとも人間の経験か。2つの相反するトレンドが席捲するなかで、アメリカの野球は日々進化している。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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