ウーバーなどは独立した請負労働者に業務を委託することによって、従業員に支給する疾病手当や休日出勤手当、保険料その他(企業にとってはコスト)を気にすることなく柔軟に、必要とする時々に働き手を雇用している。
労働者の側からみても、フルタイムで勤務するのではなく好きな時間に働けるというメリットがある。つまり、これは雇用主と労働者の双方にとって公平なシステムだと考えられる。
州議会が法案可決
だが、こうしたことの全てが、一瞬のうちに変わってしまう可能性が出てきた。カリフォルニア州議会を通過した法案が成立・施行されれば、ウーバーやリフトなどには、ドライバーをフルタイムで働く従業員として雇用することが義務付けられる。ドライバーの賃金の問題や利用料金を競争力ある水準に保つことに苦慮するウーバーにとって、さらなる悪夢だ。
米国でウーバーのドライバーが得ている収入は、最低賃金とほぼ同じ水準となっている。また、地域によって異なるが、ウーバーはドライバーから利用客が支払った料金の20〜25%に当たる手数料を徴収している。だが、それでも同社の赤字は膨大な額だ。昨年は、約50億ドル(約5400億円)の損失を計上した。
影響は他国まで拡大?
ドライバーへの賃金の支払いに関連してさらにコストが膨らむことは、ウーバーにとって最大の痛手だ。さらに、カリフォルニア州で新法が施行されれば、その「トリクルダウン効果」が広がる可能性もある。
同様の法律が米国の全ての州、そしてその他の国でも施行されることになるかもしれない。規制については、米国は他の各国にとってのベンチマークのようなものだ。そして、新たな法律が施行された場合、影響を受けるのはウーバーと競合他社だけではないことも重要な点だ。
ウーバーの今後は?
施行された場合の新法の影響は、エンドユーザーが支払う利用料金を低く抑えるためにプラットフォームを使用し、請負労働者に業務を委託しているその他の業界にも及ぶだろう。ライドシェアサービスの利用料金が大きく値上がりすることになれば、消費者も「犠牲者」になる。
ウーバーの今後
ウーバーが柔軟な働き方を求める労働者のために雇用を創出し、ライドシェア市場を生み出したように(コンセプト自体は他の国に昔からあったと思われるが)、企業は大抵の場合、消費者が負担するコストを削減するために、革新的な戦略を考え出している。
人件費を削減するための究極の解決策は、テクノロジーだ。それは農耕時代から産業化の時代までを振り返ってみれば分かる。そして私たちは今、人工知能とロボットという新たなテクノロジーの時代を迎えようとしている。
ウーバーが競合他社よりはるかに積極的に技術開発を進めてきたことは、間違いない。トヨタやソフトバンク・ビジョン・ファンド、デンソーなどの日本企業が10億ドル以上を出資するウーバーの自動運転技術部門は、評価額が72億5000万ドルにも上っている。
ただ、長期的に見れば、ウーバーが深刻な問題を抱えているとは考えられない。イノベーションに関する直観力は今後も、彼らが競合他社の一歩先を行くことを可能にするだろう。
短期的には、競合他社の動向を注視しながら、ドライバーたちにそれぞれの仕事に相応の取り分を提供していく必要がある。そうすることが、新たにドライバーを確保していくことにも役立つはずだ。