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毎日手軽に血圧測定できるなら、予防医学への恩恵は計り知れない(TeodorLazarev / Shutterstock.com)

血圧とは、身体を循環する血液が血管の壁に対してかける圧力のことだ。主要なバイタルサイン(生命兆候)の一つで、あらゆるタイプの診断や、患者を病院に搬送する前のトリアージ(傷病の緊急度や重症度に応じた治療優先度の決定)で計測され、患者の全体的な容体を調べるにあたり大きく参考にされている。

血圧は人によって大きく異なり、概日リズムやストレス、栄養状態、薬の服用、病気からも影響を受ける。普遍的な測定基準であり、臨床的観点からも必須のものだ。高血圧は心臓発作や脳卒中のリスクを高める要因となる一方で、低めの血圧は望ましいとされる。

予防医療への移行において重要な要素の一つである健康管理の分野では、正確で継続的な血圧の計測が基本パラメーターの一つとして広く認識されている。心拍数については、アップルウォッチなどのウェアラブル機器によって継続的に記録することができ、確かに有用な情報となるが、もっと重要なのはその情報を他のパラメーターと組み合わせることだ。心臓専門医らは一様に、心拍リズム以外で診断に最も役立つパラメーターは血圧だと指摘する。

そうした中、スマートフォンのカメラでセルフィーを撮るのと似た手順で正確に血圧を測定する方法を、トロント大学の研究グループが考案した。計測は経皮的光学イメージングによって行われ、スマートフォンのカメラが発した光がさまざまな速度で皮膚の表層近くのたんぱく質に反射し、ヘモグロビンの変化を極小単位で計測できるというもので、30秒間に撮影した900枚の画像から血圧を正確に読み取ることができる。

この手順が全ての肌タイプに効くかはまだ明らかではない。これは、高血圧と高血圧関連死の割合が黒人の間で高いことを考えると、重要な点だ。しかしこのアイデアにポテンシャルがあることは間違いない。毎日30秒を使った血圧測定は難しいことではなく、これによって多くの健康問題を早期に見つけることができるからだ。さらに、病気が見つからなくても、収集された情報が共有されれば多くの研究の材料となり、医学の全体的な発展につながる。

バイタルを記録するさまざまなタイプのウェアラブル機器や、睡眠をモニターするベッド、年に1度かそれ以上の頻度での健康診断に代わる簡単で正確な分析方法の開発、そしてこうしたデータの全てを処理する人工知能(AI)の登場はどれも、病気になるのを待つのではなく先を見越したアプローチに基づき、医療の姿を向こう数年で根本的に変えることになる要素の一例だ。

健康に携わる人々の考え方を本当に変えたいのなら、大学のプログラムにこうした研究と医療業務におけるイノベーションとその可能性をすぐにでも導入しなければならない。

編集=遠藤宗生

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