子どもの頃のあの気候はもうやってこない。天気を感じる感性のススメ


“観天望気”と現代の予報。天気は「面」「連続」で見て欲しい

日本の各地に、口伝として天気にまつわる言葉が多く残っている。日傘が出たら下り坂、などのいわゆる“観天望気”だ。天気を身近に感じ、感性を持って接していくべきなら、人々の経験値を言葉にした観天望気はその入り口として、再評価できるのではないか。

「実は、結構当たっているんですよ(笑)。ただ日本海側と太平洋側の違いなど、地域に根ざした表現が多いかもしれません。共通するものとしては、日傘もそうですし、夜の雷は長雨とかもありますね。これは上空の寒気を伴うため、夏の日中の気温上昇を伴う夕立と性質が違うんですね。飛行機雲が見えると下り坂というのも上空の湿気に関係しています。当たるというより、その現象が表している理由が科学的に合っているということですね」

しかしこれも当然必ず当たるものではない。喜田は、そもそも天気の見方を「面」で見て欲しいという。



「天気図も観天望気も、本来は時間の経過で見るものなんです。例えば飛行機雲も、1本ではなく、その前後で飛行機雲の変化がどうなっているか。朝と昼、長くなってくると下り坂に向かっている。逆もある。長いのが短くなってくるとか。そういうふうに見ると一気に精度が上がりますよね。うろこ雲でも雲の密度がだんだん変化していくと天気は変わる。だから線でというか、時間経過で見るっていうことは重要になってくるんです」

ウェザーニューズが配信するアプリでは、全国の会員が空の写真をアップしたりコメントを入れるなど、参加型のメニューがいくつかある。これは全国の様子をリアルタイムで確認できるため、時間経過とともに天気の様子を「面」で追いかけることができる。「今では私も毎日チェックしている」という喜田の言葉通り、予報とリアル、この掛け合わせで精度がさらに上がってくるのだ。

子どもの頃の、あの懐かしい季節はもう訪れない

最後に予報士としての使命を聞いた。柔和な表情が一転、真剣な眼差しへと変わる。

「まず、温暖化とよく言われますが、私は気候変動だと考えています。正確に言うと温暖化による気候変動です。ウェザーニューズでは四季ではなく梅雨を入れて五季と捉えていますが、その季節感がなくなるかもしれない。夏は暑く冬は寒いという当たり前がなくなったり、暑さも寒さも増すかもしれない。私たちが子どもの頃の季節感は、もう戻らないということです。その気候変動のなかで、頻発する災害を減らしたい。予報士として昔からずっと変わらない思いです。

減災という言葉も一般的になってきましたけども、災害を全くゼロにする、防ぐっていうことは今の状況見るとほとんどできない、でも、災害を減らすことはもちろんできるし、大災害が起きても人命を失わないっていうことは、多分できると思うんですよ。その社会づくりができればいいのかな。そのために発信していくっていうのが僕の中の役割の一つだっていうふうにずっと思ってやっています」


雲を追いかけ、「面」で天気を感じよう。

文=坂元こうじ 写真=飯村彩花

ForbesBrandVoice

人気記事