ビジネス

2019.09.20

女性で大丈夫? 起業家が出会った「いじわるな質問」とその対処法

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投資業界は特定の男性たちが支配している世界です。その中には悪意のある人もいるかもしれませんが、多くは公平でありたいと思いながら、無意識のうちにバイアスがある発言や判断をしています。

ハーバード・ビジネス・レビューで2017年に取り上げられた面白い論文があります。VCが男性起業家と女性起業家に聞いた質問を分析したものです。男性起業家への質問の3分の2は、成功を前提に長所や目標を尋ねるポジティブな質問でした。一方、女性起業家には、失敗を前提に「競争相手が多いがどうするのか」といったネガティブな質問が多いという結果でした。

投資家には男性は成功しやすく、女性は成功しにくいという無意識のバイアスがあるからです。しかし、もし、起業家自身がそういう質問を受けていると気づけば、適切な対応をすることができます。

ビジネスの悪い点について質問されたら、それをひっくり返して、ポジティブな答えに変えればいい。例えば、「競争相手は多くても、市場規模が大きいので我々のチャンスも大きい」など。問題を知っていれば、そういういじわるな質問への対処方法を根本から変えることができます。

──投資家サイドはどのように無意識のバイアスを克服できるでしょうか。

クイントン:ビジネスと関係ない属性とビジネスを意識的に切り離して、客観的に判断しようと努力することです。無意識のバイアスは誰にでもあるので、意識的にさまざまな人を包摂、インクルージョンしようとしなければ、無意識のうちに特定の人を排除している、ということになります。

多くのVCは「実力主義で一番を選んだだけだ」と言います。もっともなことのように聞こえますが、本当にそうでしょうか。人口の半分は女性が占めているのに、投資しているのは数%。女性の努力が足りないから? クリエイティブじゃないから? そうではありません。

MIT教授の論文で、実力主義という言葉をたくさん使う組織ほど、実力主義ではないという調査が出ました。実力主義だと言い切ったら、自分が客観的かどうか意識的に問わなくなってしまう。自分にバイアスがあるという前提に立って、よりよい判断をしようと心がけることが大切だと思います。

──女性起業家へのアドバイスはありますか。

クイントン:女性起業家に限らず、「アドバイスを聞きなさい、でも従わないで」と言っています。経験豊かな成功者にアドバイスをもらえるのは素晴らしいことですが、あなたのビジネスと目標を一番知っているのはあなただけです。誰かに言われてやったから失敗した、というのは間違いです。全ての決断はあなたのものですから。

アダム・クイントン◎コロンビア大学助教授。ルーカス・ポイント・ベンチャーズ創業者兼CEO。「Women’s Startup Lab」アドバイザーなども務める。元バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ取締役社長。

文=成相通子

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