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2019.09.20

女性で大丈夫? 起業家が出会った「いじわるな質問」とその対処法

Monkey Business Images / Shutterstock.com

「自動車産業なのに女性がCEOで大丈夫なの? ステップダウンしたら?」投資家から女性であることを理由に、差別的な発言をされた経験がある女性起業家は少なくない。女性起業家が資金調達するにあたって、何が問題となっており、どうやって対処すべきなのか。

エンジェル投資家として女性起業家の支援に長年携わっている、経営とダイバーシティが専門のコロンビア大学国際公共政策スクール助教授、アダム・クイントンに話を聞いた。


───なぜ女性起業家支援に携わるようになったのでしょうか。

アダム・クイントン(以下、クイントン):女性だからといって支援しているのではありません。単に素晴らしいアイデアを持った有望な起業家たちだったからです。それがたまたま女性でした。

米国の起業家コミュニティにおける男女格差は凄まじいものがあります。さまざまな調査がありますが、米国のベンチャー・キャピタリスト(VC)の投資総額のうち、女性がCEOを務める会社が調達した金額は全体のわずか約2〜3%、多くの調査で5%以下だと言われています。

これだけの格差の背景には、資金分配を決める意思決定者たち、つまり投資家間の男女格差の問題があると言えるでしょう。

金融情報会社の調査によると米国の女性VCの割合は10%以下です。人間の意思決定過程に無意識のバイアスがあることは社会学的調査で明らかになっていますが、その中の一つに「自分に似た人を好ましく感じる」というバイアスがあります。

自分が成功した投資家だとします。すると、自分に似ているとか同じ学校に行っていたとか、そういう人が成功しやすいと思ってしまう。悪意を持って意図的に特定グループの人を排除しようとしているのではなく、人間の性(さが)でそうしてしまうのです。それが米国をはじめとするさまざまな国の投資家にとって、根本的な問題だと思います。

──女性起業家はどう対処すべきですか。

クイントン:格差がない公平な社会が理想ですが、まずは起業家として資金調達という目的を達成しないといけません。投資家が女性差別的な発言をしたとき、その人を無視して相手にしない、というのも選択肢の一つです。個人的な選択としては悪くないかもしれませんが、現実的には資金調達に成功する機会が減ってしまうでしょう。
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文=成相通子

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