AIで「現実と区別がつかない映像」を生成 気鋭の起業家が描く映像革新

(左)EmbodyMe代表の吉田一星 (右)インキュベイトファンドのゼネラル・パートナーの村田祐介


そんな吉田が起業を志したのはヤフーに在籍していた頃。共通の知人を介して、インキュベイトファンドのゼネラル・パートナーの村田祐介と会い、表情認識の技術などについて話をしたところ意気投合。まだ会社もなく、プロダクトもない状態だったが、その場で村田は吉田に投資することを決断し、2016年にEmbodyMeは立ち上がった。

「最初はVR空間上でスカイプ、もしくはフェイスブックメッセンジャーのようなポジションを作れないか。そんな話から事業のアイデアを考えていったのですが、VR領域はプラットフォーマーがどれだけデバイスを普及させるかがキャズムになる。

吉田さんはすでに写真1枚からアバターを生成できる技術は開発していましたし、学生の頃から表情認識の研究ばかりやってきていた人。寸分違わずに、その人自体をコンピューター上に再現することに情熱を持って取り組んできていたので、VR空間に限らず、AIを用いた次世代のコンピュータグラフィックスの基盤技術の開発にフォーカスして事業を展開していくことにしました」(村田)

こうしてEmbodyMeは“誰もがAIで目に見えるあらゆるものを自由自在に作り出す世界の実現”をミッションに掲げて始動。3D Dense Face TrackingやDeep Generative Model、Polarized Face Scanningの基盤技術および応用アプリケーションの開発を重ねていき、その成果のひとつとして生まれたのが前述のiOSアプリ「Xpression」だ。

現実と区別がつかないリアルな映像を誰でも簡単に作れる

同アプリは有名人などの表情を自分の表情で乗っ取り、リアルタイムにその場で動かせるというもの。リリース後、「誰でも簡単にフェイクビデオやおもしろビデオを作成できるアプリ」として注目を集め、『世界まるみえ!テレビ特捜部』や『WBSトレたま』に取り上げられたこともある。

「同じような3D表情認識技術はアップルも提供していますが、彼らの場合は3Dセンサーを使っているためハイエンドなiOSマシンが必要です。一方、弊社の場合は一般的なカメラがあれば、どのマシンでも動きます。また、GANを使った映像生成技術においては、静止画だけでなく動画も生成でき、モバイルでもリアルタイムで動作するのが他にない特徴となっています」(吉田)


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文=新國翔大 人物写真=小田駿一

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