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エリック・ユアン

ズームのCEOは年に数回、力を入れたいチーム内に一時的にデスクを持ち、メンバーと机を並べて働く。18年10月に、現在は「ズームフォン(ZoomPhone)」と呼ばれている音声通話製品が発表されてから、ユアンはエンジニアたちのところにいた。「ズーム・ルーム」と呼ばれる会議室向け製品バンドルのアップデートもあった。スマートフォンからズームにログインするユーザーは増えているものの、大企業の多くはいまだに配線だらけの会議室に頼っている。そこで、ズームがソフトウェアを提供し、「デル」や「ロジテック」「ポリコム」などのパートナー企業がテレビやカメラ、スピーカーを供給するのだ。大企業のCEOはバーチャル会議に長い時間を費やすことが多い。そうした顧客を勝ち取るために、戦略上、重要な一手だとユアンは考えている。

今年1月には、ズームのサービスが停止して注目を集める事態に陥った。原因はクラウドサービスの「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」にあったというが、ユーザーにとってはズームのアプリが使えなくなったという状況がすべてだ。

一方、第三者の影響が有利に働く場合も当然ある。3月にフェイスブックがダウンした際、ニュージーランドの下院議会はフェイスブックの代わりに、ズームを使って委員会の様子を配信した。また、IPO前にズームが証券取引委員会に提出した書類によると、米国の大手企業上位500社の半数以上がズームの有料アカウントを最低一つは開設しているが大口契約を結んでいる企業はわずかで、今後はそこが売り上げの成長点となる可能性もある。

IPO後の最初の月曜日、デスクに戻ったユアンは引き続き、ツイッター上で顧客の声を探してリツイートし、従業員たちにも同じことを求めるだろう。ユアンはかつてあるメンターに、IPOとは高校から卒業するようなものだと言われたことがあるのだ。

「祝うのはその日1日だけ。高校が自分のパフォーマンスのピークであってほしくはないですからね」


エリック・ユアン(袁征)◎中国東部の山東省で炭鉱技師の子として育ち、山東科技大学で応用数学とコンピュータサイエンスを学んだ。米国のテックブームに憧れて渡米。英語が話せなかったなどの理由で、渡米にあたって何度もビザ申請を却下されたが、1997年にビデオ会議ツールのWebexに入社。2011年に退社してZOOMを立ち上げた。NBAの筋金入りのファンであることが知られている。

文=アレックス・コンラッド  写真=イーサン・パインズ  翻訳=木村理恵

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