上場で時価総額90億ドル超に。ZOOM創業者の「ビデオ会議」的生活

エリック・ユアンは、ズームをフル活用して多くの人とミーティングを重ね、資金調達や営業活動を行っている。


ローンチしたズームには、他社製品と決定的に違うところが複数あった。ウェブクライアントの動作は軽く、ユーザーがどのようなデバイスを使っているかをほぼ瞬時に判別できたし、クロームやサファリといったブラウザが更新される際に発生する恐れのあるバグから身を守るための、ソフトウェアのレイヤーが組み込まれていた。インターネット接続が不安定でも遅くても機能したし、料金設定は会議の開催者一人当たり月額9ドル99セント(現在は14ドル99セント)とライバルより安かった。

ズームは15年に「エマージェンス・キャピタル」から3000万ドルのラウンドの資金を調達すると、より規模の大きい顧客企業に照準を合わせるようになった。エマージェンスのパートナーたちは、ピッチミーティングにやって来たユアンに驚かされたという。姿を見せたかと思うとすぐ、投資家全員にズームのアプリをダウンロードし、自分のプレゼンを生中継するビデオ会議に参加するよう求めたからだ。

17年のシリーズD投資ラウンドで1億1500万ドルを出資した「セコイア・キャピタル」のパートナーの一人はこんな証言をしている。

「調査の過程では『世界にはエリック・ユアンが1000人いるに違いない』と思ったものです。話を聞いた人々が、大物でもそうでなくとも、みんなエリックを知っていたからなのです」

ビデオ会議のカラクリ

ユアンがありとあらゆる場所にいることができた秘訣はもちろんズームにあるが、きっかけはバスケットボールだった。ユアンは筋金入りのNBAファンで、最初はロサンゼルス・レイカーズのコービー・ブライアントに、その後は地元チームのゴールデンステイト・ウォリアーズに夢中になった。加えて、3人の子供たちのバスケットボールと器械体操の試合は、必ず見に行くようにしていた。

ズームには「バーチャル背景」機能がある。ユーザーは背景のロゴや画像を変更し、実際にいる場所を隠すことができるのだ。今年高校を卒業したユアンの長男は昨夏、ロサンゼルスでバスケットボールのトーナメントに出場していた。ユアンは会議の間、サンタバーバラのビーチを背景にしていたが、会議後に背景をスワイプすると、現れたのは汗が飛び散る体育館の光景。

「みんな、『えっ?』と言っていましたよ」
次ページ > IPOとは高校から卒業するようなもの

文=アレックス・コンラッド 写真=イーサン・パインズ 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN リミッターを外せ!」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事