中国の探査機が月の裏側で発見、謎の「ゲル状物質」の正体

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2019年1月、中国の月面探査機「嫦娥(じょうが)4号」が世界で初めて月の裏側に軟着陸を成功させた、その後、月面探査車「玉兔2号」による探査が始まり、月の裏側の模様が明らかになってきた。

そして飛び込んできたのが、「謎めいた光沢を持つゲル状の物質を発見した」というニュースだ。8月下旬、嫦娥4号と玉兔2号に関する中国国家航天局のプレスリリースが発表された。

それによると7月28日にパノラマ写真を撮影している時にクレーターの中心に「謎の光沢を持つゲル」が見つかったという。距離があり正体は不明だが、周辺とは明らかに様子が違うことは見て取れたという。「その美しい色は、驚くような物語があることを示しているようだった」と中国のニュースサイトは伝えた。

探査車は可視近赤外線イメージング分光器(VNIS)を使って光を反射させて物質を特定するために近づいたが、その結果についてはまだ報じられていない。また、国家航天局が物質の写真を発表していないことが、さらに謎めいた雰囲気を引き立たせた。

この物質の正体は一体何なのだろう。ノートルダム大学で月の地質学を専門にしているClive Nealは、衝突によって形成されたガラスだと考えている。

小惑星や彗星が月に衝突した際には、極めて高い温度と圧力が生じ、岩石が溶けて無数の溶岩プールが形成される。この溶岩が超低温にさらされて急速に冷やされ、ガラスになったというシナリオだ。

今後は可能な限りの調査が行われるだろうが、Nealよると今回の探査車はαプロトンX線分光計(APXS)のような最上位の化学成分分析技術を備えていないという。2013年の嫦娥3号のミッションで使われた玉兔はAPXSを搭載していたが、2号には搭載されていない。なぜ搭載されなかったかについては、Nealも首をかしげている。

それでは「ゲル」とは一体何なのか。NASAのゴダード宇宙飛行センターの月の地質学者Daniel Moriartyは、ゲル状の物質が見つかったという発表に興味を持ち、同僚らと議論したという。その結果、ゲルという翻訳がまずかったのではないかという結論に達した。元の中国語の意味は「ガラス」や「輝き」の方が近いという。ガラスであれば、辻褄が合いそうだ。

探査車は現在、火山地域を探査しており、遥か昔に噴火が起きた際に形成されたガラスなのかもしれない。火山ガラスは十分な調査を行えば、その特性が見て取れるという。

かつてのアポロ計画でも、宇宙飛行士によって様々な種類のガラスのサンプルが集められていた。地質学的に形成されたガラスは奇妙な姿をしているものだ。中国の研究者らが驚いたのも頷ける。

編集=上田裕資

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