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子どもたちの12人に1人が悩む食物アレルギー。自分の娘を救うためにも、この原因不明の病に筆者は挑んだ。


6月18日早朝、私儀宛てにある医学誌編集部からDecision Letterと題するe-mailが届いた。それを開けば、4日前に私儀が投稿した研究論文に対する採否結果が書いてあるはず。

その論文のテーマは、「子どもの食物アレルギーを激減させる予防法」だ。しかし、その返信が異例の早さだったため悪い結果が頭をよぎる。恐る恐るメールを開くと”I am pleased to accept your manuscript for publication”と書いてあるではないか! トップジャーナルの一発アクセプト(受理)など研究者の生涯に一度あるかないかのことだ。

ライフワークのひとつとして私が携わるアレルギー研究の成果が認められ、速やかに日の目を見るであろうことに、万感胸に迫る思いだった。プレス前の雑誌名や研究結果の公表は禁じられているため、内容の詳細に関しては後日紹介したい。

私の娘は食物アレルギーである。いまでもクルミと卵を食べられないし、製造過程の混入でも危険である。この病態、昔はなかったのにいまでは子どもたちの8%前後にまで増えた。ということは、現代生活の何かが原因であるはずだ。

2000年、増えつつあるアトピー性疾患に対してアメリカ小児科学会は「母乳栄養は可能であれば1年以上続ける、離乳食開始は6カ月以降で、アレルギー源になる食材は極力避ける」というガイドラインを出していた。これを遵守したにもかかわらず、娘は卵アレルギーになってしまった。

家族で飛行機に乗ったときのことだ。突然、娘(当時2歳ちょっと前)が喘息のような呼吸困難を伴うアナフィラキシー症状を起こした。機内食のミックスナッツを食べて数分後のことである。「ナッツ・アレルギーだ」と気付いたときはもう遅い。

父親が小児科医でも空の上でできることは少ない。膝の上に座らせ、あごをつき出しながら前傾姿勢を保持し(この姿勢をとると気道が伸び、呼吸が楽になる)、やがて事なきを得た。

その後、外食時など何度も強いアレルギー症状を起こした。発症後、店員に本当にアレルギー源が入っていないか再度尋ねると、「ナッツは入っていないけど胡桃(くるみ)は入っているよ」と返されたこともあった。回復すれば笑い話にもなろうが、それで命を落とすこともある。

私の研究は常識を疑うところから始まった。食物アレルギーになる子どもは1カ月健診時より湿疹がみられることが多い。私の娘も、産科を退院してまもなく顔に湿疹がみられ、それが首、胸、手足に広がり、かつ悪化した。かゆいところに手が届くようになると、顔が血だらけになることもあった。

つまりアレルギー症状は生後間もないころから始まっていたのである。ということは、出生直後にアレルギーを発症する何らかの原因があるのではと思い至った。次回も子どものアレルギーについて述べていきたい。


うらしま・みつよし◎1962年、愛知県生まれ東京育ち。慈恵医大、ハーバード公衆衛生大学院卒。小児科専門医。慈恵医大教授。

illustration by ichiraku / Ryota Okamura イラストレーション=ichiraku / 岡村亮太

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