ビジネス

2019.09.16

アジア最強の生き方は、「日本」にあり


中国はアリババやテンセント、バイドゥなどに代表されるネット関連企業や、ファーウェイなどのIT企業(川下産業)が勃興することで、5000〜6000ドルの天井を突破し、1万ドルに到達した。

産業構造の高度化と同時に、いかに底辺(貧困層)を底上げしていくか、が「VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)」の課題である。政治利権と絡みながら、巨大財閥が分厚い利潤の下で富を支配するのが基本的な構図だろうが、経済成長の限界に達した場合、政治や財閥批判など社会が不安定になる要素も内在する。将来的なリスクがあるのは間違いない。

確かに、全体的には光と影が同居している。とはいえ、プラスとマイナスを相殺しても今後の5〜10年、VIPは魅力的な投資対象であり続けるだろう。まだまだインフラ整備を行い、国民の生活水準の底上げを図らなければならない局面にあるからだ。各国に、「今日よりも明日、明日よりも明後日、生活がもっとよくなるだろう」という実感があり、街行く人の表情は全体的に明るい。今回の訪問先はいずれもそれに関連するドライバーを持ち合わせており、投資対象として面白そうだ。

ASEANには希望、日本にはチャンス

ASEANには投資先があるという確信を持ちながらも、あらためて日本の魅力にも気づかされる。日本の場合、がんばって勉強し、努力すれば、貧困層にいたとしてもそれなりに夢や期待を持てる環境である。

ベトナムの最貧困地域で生まれていたら、ほぼ100%その状況を逃れることは難しいだろう。仮に勉強ができたとしても、ベトナム共産党幹部との接点がなければ、大きく成功することは容易ではない。フィリピンで麻薬が社会問題化しているのも、激しい経済格差があるからだ。

日本ではどの地域にも運と努力で這い上がってきた経営者が存在する。そのような経営者と接し、彼や彼女らが経営する会社に就職することは可能だ。それになによりも、日本は安全で清潔な国である。

日本にはなく、ASEANにあるのは“希望”だ。それでも日本にも本当は希望もあれば、チャンスも満ち溢れている。たとえ特定政党や宗教団体の幹部にならなくともいくらでも成功できるし、国は安全で清潔なうえ、教育機会もある。快適な図書館が日本中にあり、インターネットで良質な情報を得ることもできる。今回の訪問で、アジアで最強な生き方とは「日本で挑戦心をもって行動すること」と、強く確信した。

まさに、「Forbes JAPAN」の読者諸賢にはそのような人たちが多いのではないか。私たちは、チャンスの海のなかにいる。その幸せをかみしめてほしい。


ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。東証アカデミーフェローを務める傍ら、明治大学のベンチャーファイナンス論講師として教壇に立つ。著書に『ヤンキーの虎─新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社刊)など。

連載:カリスマファンドマネージャー藤野英人の「投資の作法」
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文=藤野英人

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