ビジネス

2019.09.17

マイノリティが新たな価値 次世代スーパーダイバーシティ経営


EME流スーパーダイバーシティ経営

同社のオフィスはニューヨーク・タイムズスクエアのコワーキングスペース内にあり、20名ほどのスタッフが働く。「とにかく年齢、人種、出身地に関係なく、能力だけを見て採用している」と時岡が語る通り、ヨーロッパ、ヒスパニック、アジア系など多様な人種が集まり、女性は30%、LGBT+も30%だ。

マサチューセッツ州で大学まで過ごし、卒業後はニューヨークの公認会計事務所でキャリアを積んだ後、3年前にEMEに経営メンバーの一人として参画したジョー・ヒューレイは経理、財務、法務、HR、投資財務など全般をこなす。

「スタートアップだからね、全部やっているよ!」。そう明るく語るヒューレイもLGBT+メンバーだが「毎朝、起きるのが楽しいんだ。多様で明るくて、生き生きとして、仕事熱心な仲間たちと働くことができることに感謝しているよ」と話す。

時岡によると、以前の会社の企業文化が合わず、EMEに参画してくれた優秀なLGBT+メンバーは多いという。

「社会制裁を恐れてLGBT+を隠す、という選択肢もあります。しかし、自分自身になれていない社員の中には、ポテンシャルを発揮しきれていない人も多いのではないでしょうか」。そう語るのは、共同創業者の山崎健司だ。日本人の父とタイ人の母のもとバンコクに生まれ、東京、シンガポールの金融機関を経て大学の後輩である時岡とEMEを創業した。彼もまた、LGBT+を公言する一人だ。「色々な人がいる、というのは何を言ってもありの状況で、奇抜なアイデアが行き交います。経営陣としては、自由に意見交換ができる職場を提供しつつ無法地帯にならないようにするのが腕の見せどころです」(山崎)。

「日本人と違い、『やれ』と言ってやる人たちではありません(笑)。社長としてビジョンとミッション、バリューを伝え、メンバーには基本的に自分で答えを出してもらっています」と語る時岡。事業も会社も「違い」を明らかにし、ポジティブに受け入れることによって新たなエネルギーとビジネス価値を生んでいる。これがEME流次世代スーパーダイバーシティ経営なのだ。


時岡真理子◎兵庫県生まれ。現在、1歳児を持つ新米ママ。「ユーザーさんに『これがなかったら今の結婚相手に出会えなかった』と言ってもらえるのが一番嬉しいです」。2019年からアステリア社外取締役就任。

文=岩坪文子 写真=アーロン・コトフスキー

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