AI通信「こんなとこにも人工知能」

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“アルファ碁ショック”から約4年。世界最高峰の棋士と人工知能(AI)の戦いの舞台となった韓国で、もうひとつの対決が行われた。リーガルAI「アルファロー」と人間の弁護士の対決だ。

8月29日、韓国・江南にある弁護士会館で「第一回アルファロー大会」が開催され、人間の弁護士で構成された9組、弁護士AIチーム3組(AIと人間のタッグ)の合計12チームが参加した。リーガルAIは、韓国国内の研究所Intellicon Meta Labが開発したものだ。

Intellicon Meta Labは2010年に設立され、2016年に日本、2017年に英国で開催された世界リーガルAI大会で優勝した経験を持つ。韓国国内では初めて企業用法務Q&Aマシーンおよびチャットボットを開発した企業でもある。

大会では、雇用契約書の中身を検討し、その問題点を探す能力が競われた。具体的なシーンとしては、年棒およそ200万円をもらっている会社員が、企業側と9年間の雇用契約を結ぶ際の契約書を仮定したものだった。

結果は圧巻だった。AIと人間のタッグチームが1~3位を独占してしまったのだ。点数で見ると、1位のAIチームが150点中120点。4位となった人間の弁護士チームの得点61点に大差をつけた。AIとタッグを組んだキム・ハンギュ弁護士は、リーガルAIの能力について次のように話している。

「人間の弁護士が20~30分かかる作業を、AIは6秒でこなしてしまった。人工知能が考えていたよりもはるかに高い水準にあると実感した」

興味深いのは3位に入賞したチームだ。なんとタッグを組んだシン・アヒョンは弁護士ではなく、物理学を専攻する一般人だったのだ。会場にいる関係者からは、「検討時間が短すぎるので人間に不利」などの意見もあったが、いずれにせよAIの力を示すには十分すぎる大会となった(ちなみに本大会では、人間の審査員が検討結果の採点に1時間以上を割いたという皮肉なサイドストーリーもあった)。

弁護士の業務は非常に多岐にわたる。将来的にそのすべてAIに代替されるというようなことは決してないだろう。それでも、大きな変化が訪れているという事実は、本大会の結果を見る限り否定できそうにない。

AIが弁護士の仕事を変えてしまった──。後々考えた際、同大会はその端緒となる“事件”として評価されるかもしれない。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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