筆者はおこづかいをベースに、買い物という消費行動を通して金融教育をしているが、一方的に親が子どもにガミガミ言うのではなく、相互のコミュニケーションを重視している。
同じ行動を親がしたとしても、子どもの知識レベルや価値観、発想力によってその反応は千差万別だ。そのため、本稿では我が家の例を共有することで、具体的にイメージしてもらい、結果として各家庭で金融教育が行われることを期待したい。
価格の比較をし始めたら成功
筆者は3人の子どもがいるが、我が家では月に2回、月の半ばと月末におこづかいを渡している。年齢によって与える額は変えたかったのだが、それぞれのもらった硬貨の種類が違ったことで喧嘩になったので、いまでは全員に同額を与えている。このことからも、子どもへの金融教育というのは、大人が机上の空論で考えるほど簡単ではないことが分かるだろう。
一番上の子は来年から小学校に通うので、すでにそれなりのことは理解している。筆者に聞きながらではあるが、いまの貯金額で買えるものを毎回買い物時に確認することで、ざっくりと自分の購買余力を把握しているようだ。
筆者が暮らす街はファミリー層が多い住宅街のため、家の近くにスーパーが多い。これは金融教育には非常によく、子どもを全てのスーパーのお菓子売り場に連れて行く。すると、スーパーごとに同じお菓子でも値段が違ったり、たまに値引きのシールが付いていることに気が付くようになる。
そうなると、少しでも安く買えた方がお得なため、新聞に入っている広告なども気にするようになるし、なぜ同じものでも値段が違うのか、どのようなタイミングや理由で値引きが行われるのか、など一緒に理由を考えられる機会が増えてくる。このように価格を比較し始めたらすでに成功の一歩を踏み出したと思っていいだろう。
具体的な数字を提示しよう
子どもとお金の話をする時は、あまり子ども扱いをしない方がいい。そして、できるだけ具体的な数字を提示することが望ましい。
先日、子どもたちを連れて、キャラクターショーに行ったのだが、会場にはキャラクターがアニメの中で着ている衣装やアクセサリーを身にまとっている子で溢れていた。当然ながら、それを見て我が家の子どもたちもアレが欲しい、コレが欲しいと騒ぎ出したわけだが、「誕生日でもクリスマスでもないのに、買えないよ」と伝えると、すでに自分の貯金を切り崩して買い物をしたことの経験がある長女は、いまの貯金額で買えるのかと聞いてきた。「アレが欲しければ、あと3回おこづかいをもらわないと買えないね」と話すと、果たして本当に3回もおこづかいを貯めてまで買いたいのか、いまの貯金額の中で買えるものを買った方が嬉しいのではないか、など複数の選択肢からベストな選択肢を選ぼうとする。
子どもなので難しい言葉は理解していないが、この時に頭の中で行われている取捨選択は経済学でいうところの「機会費用」や「予算制約下での効用最大化」ということと同じである。具体的にあといくら、またはあと何回などと、具体的に数字を提示することで、子どもの思考も具体的なものとなっていく。