「個人的な話になりますが、私の父親は鹿嶋市に隣接する麻生町(現・行方市)出身で、私自身、子どものころから正月やお盆にはよく遊びに来ていました。そして、私が中学校1年生のときにそれまで何もなかったあの地域に大きなスタジアムができて、プロサッカーチームも誕生した。カシマサッカースタジアムのこけら落としだったフルミネンセとの親善試合をスタンドで観戦して、初めてジーコのプレーを見てファンになって以来、ずっと鹿島というチームおよび地域に対して愛着を抱いてきました」
メルカリが持つB to C(企業対消費者取引)における豊富なノウハウは、典型的なB to B(企業間取引)企業である日本製鉄が持ち合わせていないものだった。しかし、ビジネス面で与えられる大きな付加価値以上に、メルカリおよび小泉氏が鹿島に抱く愛情が最終的な決め手になった。
その象徴が湘南ベルマーレの親会社になったRIZAPグループ、FC町田ゼルビアを傘下に収めたサイバーエージェントといった他のB to C企業とは異なり、新たな筆頭株主のトップがクラブの運営会社の社長に就いた人事となるだろう。庄野氏はこう語ったこともある。
「地域創成に対しても、かなりコミットしていただいている。腰をすえて取り組んでいくからこそ、小泉社長が自ら乗り込んでくる。そこに(メルカリの)決意を見ています」
経営権譲渡が報じられる直前に、鹿島はクラブに関わる全員を一堂に集めて説明会を開催している。社長の言葉として状況を伝えた庄野氏は急きょ都内へ向かい、緊急会見に臨んでいる。クラブがより力強く前へ進むための判断であることがよくわかったと、選手の一人は明かしてくれた。
「時代が変わればクラブ経営方法も変わるという説明のなかで、だからといって現場は何かが変わるというわけではないという説明でした。なので、選手としては特に気にはしていません」
言葉通りに鹿島はリーグ戦で2位につけ、YBCルヴァンカップではベスト4に進出。天皇杯はベスト16に、連覇を目指すAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ではベスト8に進出するなど、メルカリが惚れ込んだ伝統の勝負強さを発揮。存在する4つのタイトルを独占する可能性を残している。
連載:THE TRUTH
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