ビジネス

2019.09.11

カジノ誘致の大阪に、IR大手「MGMリゾーツ」の日本愛は届くのか

MGMリゾーツ・インターナショナル会長兼CEOのジム・ムーレン


IRへの懐疑的な見方や日本国内での戦略については「重要なことは日本の企業や教育機関、NPO、街の人々など多くの人々の声を聞くことです。そしてIRをつくるには他の国の模倣をするのではなく、日本特有な芸術やテクノロジー、エンターテイメントを海外のそれらと融合させることが必要です」とムーレンは語る。

すでに同社は2015年にパナソニック、松竹、チームラボと協力し、ラスベガスにあるMGMのIR施設「ベラージオ」の噴水を舞台に、プロジェクションマッピングなどの最新技術を活用した、市川染五郎主演の歌舞伎を開催した実績がある。IRが実現すれば、能の舞台をより現代的なショーとして見せるなどのアイデアも考えているという。

なぜ大阪に注力するのか

なぜ「大阪ファースト」宣言を打ち出すほど、大阪に注力しているのか。「まず歴史的にも文化的にも非常に素晴らしい場所です。地理的に3つの空港からのアクセスが可能で鉄道網も充実しているのに加え、瀬戸内海へも近くさまざまな島をめぐることができる。また、『食の街』としても知られています。IRによって大阪だけでなく、関西全域での経済活動が活性化すればと考えています」(ムーレン)。


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そもそも日本には、大人が夜遊ぶ場所が少ないと指摘されてきた。2016年まで風営法により、クラブで大人が好きな音楽を聞き、お酒を飲みながら深夜に踊ることを禁じられていた国だ。カジノについては、石原慎太郎元都知事が「お台場カジノ構想」をぶちまけたのを皮切りに、2016年にIR推進法が成立され、本格的に誘致合戦が始まった。観光立国を目指す政府にとっても、観光地の名所だけでなく、大人が夜、遊べる場所を整備し、さらなる経済効果を期待したいところだろう。

今回の来日でもムーレンは東日本大震災の被災地を訪れ、福島の世界少年野球大会に参加した。大阪のIRでは、ラスベガス・サンズが入札を見送りしたなかで、ムーレンの強烈な日本愛は実現へと結びつくのか。

※1:2017年9月30日までの直近12ヶ月の純収益
※2:MICEとは、Meeting(会議)、Incentive Travel(インセンティブ旅行)、Convention(国際会議)、Exhibition/Event(展示会・見本市/イベント)の頭文字を使った造語

文=本田カツヒロ 人物写真=小田駿一

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