女性に投資する女性投資家の狙いとは
過去のDWENを振り返ると、ここ2〜3年で女性起業家を取り巻く環境で大きな変化がある──女性投資家の登場だ。
2017年“#MeToo”運動が本格化する前、シリコンバレー界隈では男性のベンチャーキャピタリストによる女性起業家へのセクハラ問題がくすぶっていた。この問題は、ベンチャーキャピタルのほとんどが男性であり、男性が男性のベンチャーに投資するというサイクルが出来上がっていることを浮き彫りにした。ベンチャーキャピタル投資のうち女性起業家が得られるのは2〜5%と言われている。
セクハラ問題とは別に、女性が女性に投資するという機運はあったのかもしれない。「初の女性主導・ミレニアル世代のベンチャーキャピタル」を名乗るPocket Sunもその一人だ。
Pocket Sunは中国からアメリカに渡ってビジネスを学んだ後、2016年に大学で知り合ったElizabeth GalbutとSoGal Venturesを立ち上げた。当時まだ20代前半、掲げたビジョンは“ダイバーシティのある次世代の創業者を再定義する” だ。
SoGalは生活、仕事、そして健康の3つの分野を専門とし、有機食品のLittle Spoon(米国)、さまざまなジムやヨガ教室を一括予約管理できるGuavaPass(シンガポール)などをポートフォリオにもつ。Baiduに買収されたKitt.ai、Appleに買収されたTueo Healthなど、イグジットした企業もある。投資する約50社の企業はどれも、女性が1人でもリーダーに入っている企業。このうち80%は、女性がCEOを務めるベンチャーだ。
Sunにとって女性起業家への投資は「ビジネス」だ。SoGalのポートフォリオ企業の80%が投資ラウンドの段階を1つ以上進める(シードからシリーズA、シリーズAからBなど)ことに成功した。これは「業界平均の2〜3倍」と胸を張る。評価額は過去2年で平均3倍になった。さらには、「(自分たちが投資する企業のうち)男性CEOの企業は、女性CEOよりも業績が低い」とSun。女性への投資は、ベンチャーキャピタルにとって投資先として魅力的であるというわけだ。
「ベンチャーキャピタルの投資額のうち、女性起業家が得る資金は全体の2%しかない。我々はこれを拡大し、女性に投資する価値があることを示したい」(Sun)。
Pocket Sun