女性起業家ならではの課題は、どう乗り越えればいいのか


コグニティ:河野理愛
日本から参加した河野理愛は、営業トークを評価する「UpSighter」などの製品を持つAI技術ベンチャー、コグニティを創業した。だがコグニティが河野の最初の起業ではない。スポーツが苦手だった河野は、科学的な考え方を取り入れることでスポーツはある程度上達することがわかり、中学生の時にスポーツ科学についてのWebページを作る。時は「Windows 95」が出た頃で、インターネット起爆の前夜とも言える時期だ。

河野がサッカーで行なった分析は、プロの目に止まる。16歳だった河野は、地元のJリーグチーム徳島ヴォルティスに呼ばれてゲーム分析を行うこともあった。「パスミスが発生しやすい時間などは統計からちゃんとわかる」という。河野が作ったWebページはコミュニティサービスへと進展し、特定非営利活動法人に(団体名は「スポーツインキュベーションシステム」)。当時河野は慶應義塾大学2年だった。

一方で経営に対しては限界を感じていた。そこで河野は、スポーツインキュベーションシステムをメンバーに譲渡。ソニーでの勤務を経て、再び「インターネット」に取り組むことにした。今度は、技術を使ってバイアスを取り除くことができないか──知識表現というAI研究領域を選んだ。

UpSighterはその土台の上に構築したが、最初から営業トーク分析で勝負したのではない。一人ブレスト(ブレストの抜けを指摘してくれる)、プレゼン(TEDトークのデータをもとにプレゼンを比較して構成を評価する)などの製品を作成しては投資家にピッチをし、断られた。アドバイスをもとに、BtoCからBtoBに、そして営業という分野を見出したところ、当たった。

女性である苦労は感じている。だが、顧客数が100を超えた現在、2022年の上場を見据えて「もっとビジネスを拡大したい」と河野は目を輝かせる。

WAmazing:加藤史子
同じく東京都女性ベンチャー促進事業APT Womenの第3期生が、WAmazingの加藤史子だ。インバウンド向けに宿泊、アクティビティなどの旅行サービスを展開するが、ユニークなのは無料のSIMを配るという入り口だ。今回、目下の課題である中国進出を考えてDWENに参加した。やはり2022年にIPOを目指しており、5月にはシリーズBとして総額約9億3000万円の資金調達を行なった。

リクルート「じゃらんnet」などで経験、ノウハウ、人脈を構築しての起業で、資金調達も順調。ピッチには自信がある。「ピッチコンテストは全て優勝している」と加藤。唯一の女性だったICCパートナーズが主催するイベントでの「スタートアップ・カタパルト」では見事優勝した。女性限定のピッチコンテストもあるが「女の中で戦ってもしょうがない」と加藤はいう。


左から角田雅子、山田千代子(Dell Technologies)、加藤史子(WAmazing)、長森真希(キャリーオン)、米倉史夏(Waris)、志賀恵子(アンブロシア)、武臣ゆみ(オーベン)、菅原智美(エメラルド倶楽部)、河野理愛(コグニティ)、若林愛、松本笑美(Dell)
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文・写真=末岡洋子

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