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ビジネス

2019.09.13 12:30

異端児扱いだった私の「風向きが変わった瞬間」

Forbes JAPAN 9月号(7月25日発売)の特集、「SELF MADE WOMEN 100」。そのカバーストーリーの後編をお届けする。イスラエルで起業し、事業を軌道に乗せたカプリンスキー真紀。創業して10年ほど経ち、彼女は日本へと戻る決断をする──。(記事前編はこちら


再び日本へ。

「これも思い切った決断でしたね」と真紀は笑う。約10年続けたWBOを閉め、東京でIQPを設立したのにはいくつか理由がある。最愛の母親が難病になったこと。そして、日本で子育てをしたかった。

5歳と2歳の息子、生後3カ月の娘を抱え、日本に住んだことがない夫と2度目の起業。高校卒業後、初めて日本で暮らせることは大きな幸せだったが、会社は苦労続きだった。

2010年代前半、IoTという言葉が一般的に使われ始めた時のことだ。IQPは、プログラミングの専門知識がなくてもIoT用アプリケーションをつくることができるプラットフォームを開発していた。

「必ず需要が伸びる」。そう信じた2人はイスラエルの技術者と一緒にプロダクトをつくりあげ、日本の企業に売り込みをかけた。富士通が採用し、その半年後に投資、SBIインベストメントも加わった。使ってみたいという問い合わせは増え、手応えはあったものの、検証段階で終わることが続いた。

SBIインベストメント執行役員で、投資部部長の仁位朋之はこう振り返る。「2人の発想は先を行っていると思いましたが、日本の大手企業はベンチャーの商品を使ってみようという発想がまだまだなかった時代。特にIoT関連の大企業は自前主義で、様子見をしていて前に進まなかった」。

確かに、企業に話を聞きに行っても「米国の様子をウォッチしています」という答えが返ってくる。「それならば」と彼女は決意した。自分たちが米国に行けばいいんだ、と。

16年に米国進出を果たし、冒頭の売却につながった。母親は2年間の介護の後に亡くなった。

「未来の交通をつくる」

18年3月、2人はNFTを米国で設立した。空飛ぶ車の設計とそのソフトウェアの開発を行うスタートアップだ。19年6月、イスラエルの移動関連スタートアップが集まる同国最大規模のイベント、EcoMotionで発表されたNFTの3人乗りの空飛ぶ車、ASKAを見てほしい。



大型SUVサイズの車に、横に大きく広がる折りたたみ式の翼がついている。特徴的なのは小型のファン14台が車のボディと翼に埋め込まれている点だ。この小型ファンによって、同社のソフトウェア技術を生かした比較的安価で安全なeVTOL──電動式の垂直離着陸機が実現可能になる。
 
SFの世界のことのように聞こえるかもしれないが、ASKAのようなeVTOL業界は、テック企業、大手航空会社、名だたる自動車メーカーなどが相次いで参入する注目分野だ。モルガン・スタンレー・リサーチは、40年までにeVTOLが一般に普及する可能性があり、市場は150億ドル規模に成長すると見込んでいる。
次ページ > eVTOLの実現に向けて

文=成相通子、瀬戸久美子

この記事は 「Forbes JAPAN リミッターを外せ!」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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