技術が飛躍的に進化し、テクノロジーにかかるコストは劇的に低下し、世界で新しいスタートアップが次々と生まれ、テクノロジーは私たちの生活のあらゆるシーンに浸透してきました。これから、そのイノベーションを引き続き導くには、男性陣からの視点だけではなく、ありとあらゆる視点からの模索が必要となります。世界の人口の50%が女性です。消費財購入の80%を決定していると言われ、その額は2000兆円を超えます。
人間のライフスパンで考えると、世界の3分の2の人口と年齢層に、テクノロジーの恩恵が行き届いていません。男性がインフルエンサーである20歳から60歳のビジネスを中心とした生活環境ではテクノロジーは発展してきましたが、誕生から20歳までの幼児教育などの分野、60歳以降から死ぬまでのヘルスケアや介護などの分野は、アナログな部分が多く、結果、女性が仕事を辞めざるを得ないなど、負担につながっています。家事や幼児教育など、家族の課題を解決したりサポートする「ファミリーテック」という言葉も今年になって聞かれるようになりました。
テクノロジーで解決できるイノベーションの余地が大いにあります。ましてや、これからAIやAR、VRといったテクノロジーが生活の深い部分に関わってきます。そこに女性が入らないことで、どれだけの損失があり、問題が起きるか計り知れません。
2018年、VCファームのイルミネート・ベンチャーズが起業家に行った調査によると、40%以上の女性起業家が「同性の投資家が限られていることが成功に向けての障害になっている」と答え、65%以上の女性起業家が「女性であることが不利である」と答えています。起業したい女性が自身のアイデアを訴えても、投資家の男性たちは、彼女たちが解決したい問題自体が分かりません。
総務省の「就業構造基本調査」によると、日本では、20~24歳を除きすべての年代で男性より女性の起業家数が少なくなっています。女性の中では、35~39歳が最も多く、子育て期の女性にとって「起業」がキャリアの一つの有効な選択肢となっていることが推察されます。シリコンバレーでも同様です。
しかし、一般的なアクセラレーターが提供するプログラムは、3カ月ほどスケジュールを拘束されることがほとんどです。一方起業を考える女性たちは、結婚していたり、子どもを持っていたりします。そういった状況で、特に子どもを置いて3カ月もプログラムに参加することはできません。現在はビジネスのアイデアを考えて、投資を受けて、起業をして、といったすべての流れが男性中心に作られています。だから今は、『女性』に特化した起業支援、サービスが必要です。そして、いずれはエコシステム自体を作り変える必要があると私は思っています。男性中心の起業エコシステムを改善し、女性により多くの機会を与えることで、さらにイノベーションが促進していくことは疑いの余地がありません。
堀江愛利◎広島県出身。米カリフォルニアの大学を卒業後、IBMに入社。2013年にシリコンバレーでWomen’s Startup Labを創業。女性起業家、リーダー育成のためのアクセラレーターを運営。
シリコンバレーや世界とつながる!女性起業家リレーピッチイベントを開催。
WiSE24「Women’s International Showcase of Entrepreneurs Day (WiSE)」Japan Chapter
日時:2019年9月20日 9:30〜12:00
会場:Forbes JAPAN EVENT SPACE(東麻布一丁目ビル2F) 東京都港区東麻布1-9-15
主催:Women’s Start Up Lab
協力:Forbes JAPAN
シリコンバレーやアジアの国々をオンラインでつなぎ、各国の女性起業家がシリコンバレーや世界の投資家や関係者に向けてピッチする初の試み。日本からは5人の女性起業家が参加。東京会場から世界に向けて中継されます。詳細はWomen’s Startup Labのホームページをご覧ください(英語)。