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2019.09.10

世界のペーパーカンパニーに「奪われた税収源」、15兆ドルに

Naresuan261 / shutterstock.com

世界中のリーダーたちは、企業による租税回避を阻止するための努力を続けてきた。だが、納税を避ける目的で移動された資金は、実際には過去10年で増加していることが明らかになった。

国際通貨基金(IMF)がこのほど発表した調査報告書によると、世界中にあるペーパーカンパニー(幽霊会社)に特定の目的で送金され、保有されている金額は、およそ15兆ドル(約1610兆円)に上るという。これは、各国・地域の税収がそれに見合った分だけ奪われていることを意味する。

15兆ドルは、世界の海外直接投資(FDI)全体の40%に相当する金額だ。FDIは同じ親会社の傘下にある企業間で国境を超えて行われる投資(送金)のことを指し、もともとは投資先の国・地域の経済成長と雇用創出を促進する手段とされてきたものだ。

だが、報告書によれば、各地の事業実態のないペーパーカンパニーには、FDIの形を取った「ファントムキャピタル(架空の資本)」がつぎ込まれている。こうした送金は、ある種の「金融工学」を用いて納税を回避するための方法だ。

資金移動の振り向け先となる国・地域は、「ファントム」のFDIに課税することはできない。だが、企業の会計処理やその他の財務管理サービスが国内(域内)で行われていることによって、いくらかの恩恵を受けている。

報告書はその他、各国政府や金融機関は「ファントムキャピタル」によって、FDIが経済成長に与えている影響を正確に把握することが困難になっていると説明。さらに、驚くべき事実として、「15兆ドル」がドイツと中国の国内総生産(GDP)の合計に当たる金額であることを指摘している。

IMFは今後、こうした架空のFDIに関する新たな調査結果を発表する予定だ。個別のFDIについて、それらが「ファントム」であるか、実際に地域経済の支援に役立っているかを明らかにするものであり、注目すべき報告となる。

恩恵を受ける10の経済圏

法人税率が低いことは、節税を目指す企業にとっては魅力的だ。FDIを誘致するために、税率を極端に低く設定するなどの経済政策を導入している国・地域もある。例えば、アイルランドは1980年代に50%だった法人税率を、現在は12.5%にまで引き下げている。

IMFがこのほど公表した報告書では、世界中の「ファントム」FDIの85%以上が、アイルランドをはじめとする10カ国・地域に対して行われていることが明らかにされている。

編集=木内涼子

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