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フォーブス ジャパン ウェブ編集部 エディター


子供が触れる家を作りたい

西久保氏は言う。

「日本の建築の世界では、色はアカデミックではないとタブー視する傾向があります。空間論のみが強くて、色を使うと『ファンシー系』だとか言われる。大学の建築学科も、インテリアデザインを少し下に見るようなことがあって、色を使わないでストイックに建てるのが名建築だ、みたいな考えがある。でも僕は、社会人になって1年だけ勤めた会社っていうのが、すごく色を使うところで、新人の時、現場でひたすら色を作らされていたんです。だから、色を使うことに対して抵抗感がありません」


西久保氏は「色を使うことに対して抵抗感がない」という

とはいえ西久保氏も、独立したばかりのときは、やはりまずは白とコンクリートの壁色で家を建てた。ところが、新築する建て主には若い家族が多く、子供もまだ小さいことが多い。

ある時、西久保は、無事落成した新築お披露目の日、真っ白な壁に子供が触った時に、「こら、新築だからだめよ」と建て主が叱るのを見て、強く感じたという。

「そういう家を作りたかったわけじゃないのになあ。家は子供たちが育つ場所で、子供らしい発想の源でもあってほしいのにって。

それをきっかけに、ざらざらした質感や、鮮やかな強い色、くすんだ色などを積極的に使うようになりました。子供がベタベタした手や泥の手で触っても大丈夫なように。今も、完成した時が頂点で、どんどん落ちていくのが嫌で、使えば使うほどよくなっていく家がいいかなと思っています」

依頼主に書かせる「つぼノート」?

さて、建築家に好きな家、建てたい家を「伝える」ことはとても重要だが、口下手な建て主の場合、どうすればよいのだろうか。


依頼主に作ってもらう「つぼノート」

西久保は依頼主に、「スクラップブック」を作ってもらうという。名付けて「つぼノート」だ。

「食べ物でも音楽でも洋服でも、暮らしにまつわる好きなこと、「これが自分にとってのツボだ、ど真ん中だ」という物を全部教えていただくためのノートです。好きなパンティストッキングの色をグラデーションで貼ってきた方や、はたまたこれから家を建てるいうのに、朽ち落ちた家や場所の写真ばかり貼ってきた「廃墟好き」もいらしたり、色々です」


当時「つぼノート」提出義務はまだなかったが、飯島夫妻が「自主的に提出したという、レコードジャケット。

1冊分、スクラップしてもらうと、かなり個性や嗜好がわかります。あとは夫婦でも共通点あり、バラバラな好みあり、と。家を建てたい方たちの心のカオスや矛盾も知った上で、タッグを組みたいんです」

実は、飯島夫妻は、この丹精した家を「Airbnb」‎で世界からの旅行者に貸しているという。

「『この家いいだろう』と見せびらかしたい、というのが原点ですが、あとは、どんどんいろんな人に触ってもらい、可愛がってもらうことで、家は完成すると思っているんです」

この週末も、世界からの旅行者で飯島家の予約はいっぱいだ。

転勤中の留守宅を「設計した建築家が預かる」という発想。中野区発『birdプロジェクト』とは に続く)


西久保毅人◎1973年佐賀県に生まれ、育つ。1995年明治大学理工学部建築学科卒業。1997年同大学院修了(小林正美教授に師事)。象設計集団、アトリエハルを経て2001年一級建築士事務所ニコ設計室設立。近著に『家づくりのつぼノート』(エクスナレッジ)。

飯島尚子
◎フードライター。料理と美食と美酒と愛犬と.....をこよなく愛し、白金のわが家(平日)/千葉のセカンドハウス(週末)のデュアルライフを楽しむ。

構成・文=石井節子

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