その翌日、“ハマのドン”の通称をもつ横浜エフエムの社長にして横浜港運協会会長の藤木幸夫氏が記者会見を開き、IR誘致反対の強い意思を表明。政界人脈も太く、菅義偉官房長官や麻生太郎副総理とも昵懇(じっこん)の藤木氏の発言が、どこまで影響を及ぼすか注目されている。
日本では昔から何度も禁止令が出されてきた賭博だが、世界でカジノをいち早く合法化した都市は言うまでもなくラスベガス(1931年)。その後はイタリア、中国、マカオ、モナコ、韓国の一部の都市で観光産業として合法化されている。
IR誘致で最も心配されているのはギャンブル依存症の増加だが、競輪、競馬、パチンコなどは言うまでもなく、私たちの生活の中には既にギャンブル的要素が多く入り込んできている。金融の先物取引や投資などもギャンブル性があるし、ブラック企業が増加する状況下では就職も一種のギャンブルと言えるだろう。
先が見えない中で何かに賭け、賭けた以上の見返りを期待してしまう人間心理を利用するシステムは、あらゆるところにあると考えていいのかもしれない。
典型的な「父の娘」が…
今回紹介する『モリーズ・ゲーム』(アーロン・ソーキン監督、2017)は、富裕層の男達の集まるカジノを経営した女性モリー・ブルームの自伝を元にしたドラマ。チャレンジングなヒロインをジェシカ・チャステインが演じて話題を呼んだ。
物語はモリーの少女時代の回想から始まり、カジノの違法経営の容疑でFBIから逮捕状が出されている現在と、そこに至るプロセスを交互に語るという形式が取られている。
臨床心理学者でコロラド大学教授の父を持ち、子どもの頃から厳しい教育を受けてきたモリーは、モーグルで頭角を現すが、ソルトレイクシティ五輪の出場資格を得るための大会で大きな怪我を負い、13歳で脊椎手術。1年半後に復帰するも、結局は選手の道を断念することになる。
回想に現れる思春期のモリーは努力家で負けず嫌い、頭が良くて早熟な、典型的な「父の娘」だ。「父の娘」とは心理学用語で、息子に対するような父の期待と要求に応えるべく努力を惜しまない、男性の論理を内面化した女性を指す。
大学の成績もトップだった彼女は一旦は法律家に進路変更するものの、心機一転のためロスに単独移住。セレブの集まるハリウッドのクラブで働くうち、不動産屋のディーンと知り合い、昼間は彼の事務所で雑用係をするようになる。