デザイナーにはデザイナーのための運用プロセスが必要
2008年の世界経済危機以降、ビジネスは有効性(effectiveness)より効率性(efficiency)を重んじるようになった。この時に、エンジニアの世界では「Dev Ops(Development Operations)」が発展。
開発手法やツールを使って開発者(Developer)と運用者(Operator)が密接に連携することで、 より柔軟かつスピーディーにシステムを開発できるようになった。ここからリーンやアジャイルといった開発手法や、Githubのようなツールが生まれ、結果としてプロダクトの品質が高まったのだ。 そしてデザイナーもエンジニアのプロセスに合わせて制作するようになったのだが、Dev Opsのプロセスはデザイナーにはあまり適してはいなかった。
「エンジニアが多勢を占める組織の中にデザイナーが1人。どうやって自分はこの中でサバイブするのか? 非効率なプロセスの中でデザインだけにフォーカスしている人がこの問題に頭を悩ませた結果、もっと率先して、積極的に改善していかなくてはいけないという動きが生まれ、Design Opsにたどり着いたのです。 デザイナー自身がデザインの価値を経営者や組織に理解させ、デザインのアウトプットを最大化するためには、デザイナーに適した運用方法が必要なのです。Design Opsは、デザイナー自らがビジネスの中で生き残っていくというマインドを持つようになった現れなのです。」(Dave Malouf)
ビジネスにデザインの貢献度が認められたいまこそ、デザインのための最適な運用プロセスを導入する必要があるのだ。
Design Opsはいつ、どこで生まれたのか?
Design Opsは、2014年アメリカのインタラクションデザイナーDave Malouf氏が用語と運用プロセスを定義したのが始まりである。彼はThe Interaction Design Association(IxDA)の創始者であり、Design Opsのコミュニティやイベントを主催するだけでなく、コンサルタントとしてDesign Opsを採用したい世界中の企業に招かれている。
出典:DesignOps Handbook
「私はデザイナーとしての25年以上にわたるキャリアの中で、デザインをもっと世の中に効果的に届けるために、デザイナーの仕事をスムーズにし、彼らのアウトプットを最大化させるための方法を模索し続けてきました。 IT業界でサービスデザインや組織デザインを考えたり、大学でインタラクションデザインを教えたり、コミュニティを運営してきました。その中で、プロセスを改善すればデザインのアウトプットの向上に繋がるということがわかってきたのです。
そのためには、デザイナーの思考をこれまでのCraft(職人的)からOperations(運用)の思考へ変えなくてはいけないことに気づきました。デザイナーも組織の一因として、自分だけでなく組織のアウトプットを最大化させるための考え方にシフトしなくてはいけません」(Malouf)
しかし、それ以前でもデザイン先進企業ではOperatorの必要性は感じており、Design Opsという言葉を使用しないまでも自然発生的に行われていたのである。