派遣社員から社長に。ポーラ傘下ブランドを育てる山下慶子の信念

DECENCIA代表取締役社長の山下慶子


DECENCIAは、創業以来山下がまるで我が子のように育ててきたブランド。もし彼女がいなくなったとき、ブランドはダメになってしまうのではないか。そんな疑問にも、彼女はあっさりとこう答える。

「人が変われば、ブランドも変わっていい。昔と比べるとブランドは少しずつ変化をしています。私はむしろ変えちゃいけないルールがある方がしんどいです。変えてはいけないブランドの根幹を保ちつつ、その人らしいブランドを作っていけばいいと思っています。正解を決めるのは歴史です。私はたとえ明日辞めることになっても後悔はありません」

DECENCIAは、今年新ラインを発表し、伊勢丹新宿店に出店をする。これも、山下がいたからこその新しい取り組みで、タイミングとしても今しかなかったのだ。

彼女はブレてはいけないブランドの根幹を「真善美」という言葉で表現する。16年、人気ラインの「アヤナス」という商品をリニューアルした際、炎症を想起するために業界ではタブー視されていた“赤色”をパッケージカラーに起用したことがあったが、これも「一般的な価値観ではなく、ブランドとしての『真善美』に照らし合わせた結果」だったのだ。結果として商品は大ヒットを記録し、ブランドの成長にも大きく貢献することになった。


赤を取り入れたリニューアル後の「アヤナス」

変化を受け入れる覚悟を持ち、人やものごとと“フェア”に向き合える。そんな彼女には、稀有なバックグラウンドで身につけた人生における価値基準があった。それがそのまま生かされた“変わることを許された”ブランドだからこそ、独自性を保ちながら成長してこれたのだ。これこそ、変化の激しい時代に対応できる、彼女が見つけたブランド論なのかもしれない。


やました・よしこ◎1976年、愛媛県生まれ。鹿児島女子大学文学部を卒業後、北京清華大学へ留学。2000年、旅行代理店のエイチ・アイ・エスへ中途入社。05年以降派遣社員を経て、2007年1月にポーラ・オルビスホールディングスへ入社。同社傘下の株式会社decencia(現DECENCIA)へ出向し、15年2月に同社CRM統括部⻑、17年3月から同社取締役。18年1月に代表取締役社⻑に就任。

文・写真=角田貴広

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