新しいのにどこか懐かしい、デンマーク的エコビレッジ生活のススメ

デンマークにあるエコビレッジ、ハリンゲリレ。ユニークなデザインの建物たちが並ぶ


ハリンゲリレは、コペンハーゲン中央駅から電車で1時間弱ほどいった駅からさらに車で20分ほど進んだ広々とした牧草地帯の中にある。拓かれた20ヘクタールほどの土地には、子供が約30人、大人が約50人の合計80人ほどの住人が、合計20棟の住戸に分かれて生活している。


(右)エコビレッジ ハリンゲリレの全体地図、(左)敷地内の公園で遊ぶ子供たち。

村内の建物は6〜8棟ごとに3つの群になっており、各グループの建物は柵のない広大な庭を囲んで並んでいる。建物は、配管や設備などの専門的な作業を除き、ほぼ住人たちの手によって建てられた。

一つとして同じものはない個性的なデザインとともに、可能な限り環境に優しい建材が使われているのも特徴だ。焼かずに圧縮だけで固めたレンガ、麻と石灰を混ぜた壁、はたまたストローハウスなどが目に留まる。


自然素材を多く使ったパッシブデザインが多くの住宅に取り入れられている。この建物の壁の一部は麻と石灰を配合して固めて作られている。

また、エコビレッジの大事なルールの一つに、共同作業がある。村に生えている木の剪定、畑の作業や家畜の世話の他、大工仕事や村の下水処理施設のメンテナンスなど高い技術が求められる作業もある。村の人々は、可能な範囲で村に貢献できることを行う。

例えば高齢者たちには、村のツアーガイドなどがおおく割り当てられる。村で飼っている羊やニワトリ、ポニーの世話は、子供たちに人気のある作業の一つだ。それ以外にも週に一度、村の人全体で夕飯を食べることもある。畑でとれた野菜を使って、それらの料理を調理したりするのも、もちろん大事な共同作業の一つである。


家畜の世話をする子供たち。

ハリンゲリレでは、エコビレッジとしてユニークな試みに挑戦している。難民との交流だ。デンマークをはじめ、ヨーロッパ諸国は近年難民の受け入れが大きな社会課題として持ち上がっているが、この村では週に2度ほどデンマークで受け入れた難民たちを招いて、一緒に畑を耕したり、庭の手入れをしたりしている。

大きな苦難をこえてヨーロッパまでたどり着いた難民たちには、心に大きな傷を負った人たちも多いが、土いじりなど自然と触れ合うことで、心に落ち着きがもたらされるという。


難民の人たちが働くために作られたガラスハウス。

デンマークのエコビレッジを訪れて感じるのは、日本の現代での生活スタイルとの大きな違いであるとともに、子供の時には感じていた、もっと自然が近いところにあったようななにか懐かしい空気だ。

近年の日本の技術の発展は素晴らしく、多くの新しい便利なものが生まれている。しかしその裏には、多くの先人たちの知恵や経験が忘れ去られていってしまっている気がしてならない。私たちには、またそういったことにまた眼を向ける時が来ているのかもしれない。

文=蒔田智則 写真=加藤比呂史

ForbesBrandVoice

人気記事