職場での自殺を防ぐためにできる5つのこと

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ローラはある月曜日の朝、いつも通りIT部門のオフィスに出勤した。すると彼女は、気味が悪いような静寂が漂い、個々の作業スペースに全く人がいないことに気づいた。

ローラは、同僚たちが職場の後方で輪を作り、互いに抱き合い泣いているのに気づいた。その一団に近づくと、ローラはチームマネジャーのロンが自殺したと知らされた。ショックを受けた彼女はその輪に加わり、衝撃と悲しみから涙を流した。

米国でも自殺は増加傾向に

米国では、自殺の件数が過去50年で最高になり、自殺する米国人は毎年約4万4000人に達している。自殺率が最も高いのは、45~64歳の働く成人だ。

米疾病対策センター(CDC)の憂慮すべき最近の報告書では、米国の自殺率が第2次世界大戦以降最高を記録したことが分かった。同報告書によると、全ての人種・民族・性別を合わせた自殺率は、1999年から2017年までの間に33%上昇していた。

若い世代ではいじめがまん延し、自殺についての議論が広く浸透しているが、米国での自殺率増加の要因には高いストレス水準やオピオイドのまん延、ソーシャルメディアの浸透などがあると考えられている。また、薬物乱用障害の人は薬物を使わない人と比べ、自殺する確率が6倍だ。

職場での自殺が増加

職場の問題に関した自殺も増えている。最後のデータである2013年の数字によると、米国では270人の従業員が職場で自殺した。これは2012年と比べると12%の増加だ。従業員が仕事の忙しさをほとんど、あるいはまったくコントロールできなくなった場合、仕事のストレスが自殺の主な要因になると考えられている。

従業員支援プログラムを提供するコムサイク(ComPsych)の調査「StressPulse(ストレスパルス)」によると、職場でのストレスの主な要因は過剰な業務量(46%)や対人関係の問題(28%)だ。自殺、あるいは自殺未遂を犯す従業員のほとんどは心の健康問題や精神疾患を抱え、治療を行なっていない。

既にストレス要素を抱え、不安や鬱(うつ)、ドラッグの使用など心の健康問題を持つ不満な従業員が昇進を逃したり解雇されたりすると、それが最後の一撃となる可能性がある。

男性従業員は女性と比べ、職場の問題で自殺する確率が15倍だ。また、米国立衛生研究所(NIH)のある調査によると、自殺をしなかった112人の対照群と比べ、自殺した63人の従業員集団は鬱や不安、多額の借金や高い衝動性などを持ち、社会的支援に乏しかった。

自殺を考える人のうち、10人中8人が自殺の意思を持つ兆候を示している。あなたや知り合いが自殺を考えている場合、どのような兆候を意識すればよいかや何をすべきかを知ることが重要だ。
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翻訳・編集=出田静

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