自分のリミッターを解除する方法 世界を変える女たち

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Forbes JAPAN 9月号では毎年恒例の女性特集を掲載したが、なかでも今年は「セルフメイドウーマン」に焦点を当てた。女性が自ら道を切り拓くのに必要なのは、内外に立ちふさがる「壁」を取り払い、リミッター(制限装置)を外すことだ。


「世界を変える力が欲しい」

「力が欲しいからお金を稼ぐんじゃないの? 日本人は違うの?」

映画『セブンス・コード』(黒沢清監督、2013年)で、日本語堪能な中国大連出身のレストラン店員の女性が元AKB48の前田敦子扮する主人公に語るシーンがある。そして彼女は、ウラジオストクからシベリア鉄道に乗りこむ際、与謝野晶子の詩『旅に立つ』を口にするのだ。「いざ、天の日は我がために 金の車をきしらせよ……」。胸がすく名シーンである。

毎年フォーブスが発表するビリオネアランキングの中では、中国の女性起業家でレンズ・テクノロジーの創業者、周群飛(Zhou Qunfei)の存在は際立っている。貧民街に育ち、低所得の工場労働者から、スマートフォンのカバーレンズを製造する企業を創業した。米中貿易摩擦による株価下落で、今年資産が一気に目減りしたことでも話題になったが、それでも33億ドル(約3500億円)の資産を持つ。

フォーブス ジャパンではこれまで4回、女性特集を企画しているが、今回初めて、自ら道を切り拓く女性たち「セルフメイドウーマン」にスポットを当てた。「資産家」という意味では男性同様に、数、規模的にも米国や中国に遥か及ばないが、日本でもキャリアとして「起業」を選ぶ女性は増えている(東京商工リサーチの調べでは、17年の全国の女性社長の数は41万1969人で、10年から2倍増)。

「インターネットは女性のビジネスチャンスを拡大させている。女性はもはや男性のように振る舞う必要もない」と、周群飛も過去のフォーブスのインタビューで述べるように、テクノロジーの発展によって起業コストは劇的に低下し、アイデアを形にしやすくなった。

安倍内閣は14年より成長戦略に「女性活躍推進」を盛り込んだが、18年の上場企業の女性役員比率は3.8%と依然先進国で最低レベルであり、育休休暇があっても男性の取得率は6.16%と低い。問題は企業文化と社会にあるのは明らかであり、これを変えるのはかなりの時間がかかる。

一方、起業の強みは、企業文化や価値を新しく作れることだ。15年に日本人で唯一、米フォーブスのセルフメイド富豪女性にリスト入りした久能祐子やカプリンスキー真紀のように「海外で起業する」という選択肢もある。自分の時間を自由に管理でき、出産や子育てと両立しやすい、というメリットもある。

もちろん、女性の起業を阻む壁や課題も少なくはない。女性社長を年商別にみると5000万円未満が最も多く「女性の起業は小規模である」とのバイアスを崩せない。日本でも周群飛のようなロールモデルと、スケールする市場での起業が必要だ。また、現在は資金調達に重要な役割を果たすベンチャーキャピタル(VC)やコミュニティは男性中心に作られており、女性起業家に特化した物心両面の支援も求められる。

一方で、日本が諸外国に比べて起業家の数や規模が拡大しない理由について、自身で可能性を制限しているのではないか、と指摘する意見もある。「多くの女性たちは(男性も同様)30年、40年生きてきた中でさまざまな壁を作っています」と話すのは、シリコンバレーで女性起業家のアクセラレーターを運営する堀江愛利だ。「自身がわくわくするコア(核)を再確認し、壁を一つ一つ取り外していく作業が必要」という。

今回、自ら道を切り拓いている女性たち50人に「わくわくは何か」と聞いたところ、「社会のためになることと自分のしていることが一致していること」と答えた起業家は多かった。インドネシアでVCを創業し、同国のIT化やスタートアップ・エコシステムに大きな影響を与えているジッタ・アメリヤや、テクノロジーと金融で工場や生産者といったサプライチェーンを支援し、ファッション業界の低賃金労働慣習を変えるインド人女性アンキティ・ボーズらがそうだ。

これまでの世界にはない、新しい選択肢である。日本の女性たちも内外のリミッター(制限装置)を外し、眠る可能性を解放させ、事業を起こし、数多くセルフメイドウーマンとして活躍してほしい。


シリコンバレーなど世界10カ国以上とつながる!女性起業家リレーピッチイベントを開催。
WiSE24「Women’s International Showcase of Entrepreneurs Day (WiSE)」Japan Chapter

日時:2019年9月20日 9:30〜12:00
会場:Forbes JAPAN EVENT SPACE(東麻布一丁目ビル2F) 東京都港区東麻布1-9-15
主催:Women’s Start Up Lab
協力:Forbes JAPAN

世界10カ国以上をオンラインでつなぎ、各国の女性起業家がシリコンバレーや世界の投資家や関係者に向けてピッチする初の試み。日本からは5人の女性起業家が参加。東京会場から世界に向けて中継されます。詳細はWomen’s Startup Labのホームページをご覧ください(英語)。

文=岩坪文子

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