デジタル化が進むなかで、筆記具がより存在価値を増す理由

(c) montblanc


「構想と製作に3年。インスピレーションの源となったのはカール・セーガン(天文学者)の著書にあったTiny Blue Dot(小さな青いドット)という言葉でした。このドームだけで100近いプロトタイプを製作し、我々の地球の青はどうあるべきか、試作を重ねました」と製作プロセスを明かしてくれたのは同社クリエイティブ・ディレクターのザイム・カマル氏。

最近はデジタルガジェットばかり使っている18歳の娘も、この新作だけは大切に使ってくれていると相好をくずした。確かに我々を取り囲む環境はデジタル化が進む一方だが、アナログな筆記具にどのような展望が残されているのだろうか。

「デジタル化が進めば進むほど、アナログな筆記具はむしろよりラグジュアリーなアイテムとしてピュアな存在価値を増していきます」(バレツキー氏)、「人間の、何か書き残したい、手で書きたいという欲望は本質的なもの。ネアンデルタール人の壁画やアルタミラの洞窟しかり、その本能が我々の内に生きている限り、筆記具が必要となります」(カマル氏)と、ふたりとも筆記具のさらなるポテンシャルを確信しているようだった。

そしてもうひとり、「筆記具、それもモンブランの筆記具なしにはいられない」と話す人がいた。『X-MEN』や『グレイテスト・ショーマン』で知られる俳優、ヒュー・ジャックマン氏だ。



「ぼくはもともと悪筆で、人前で何か書いたりするのがすごく苦手だったんです。でも父からモンブランの万年筆を贈られたことがきっかけとなり、徐々に楽しくなって。現在も毎日礼状を書いたりサインを求められた際にモンブランの万年筆を使いますが、そのペンを見るたびに贈られたときのうれしさや、誇らしい気持ちが心の中を満たしてくれて、いつでも胸を張っていられるような心持ちになるんです。相変わらずの悪筆だけどね(笑)」

クラフツマンシップとイノベーション、そしてモダニティが凝縮された1本の筆記具はまるで小宇宙だ。手の中の小さな青い地球が、その美しい地平線を見せるとき、我々の「スターウォーカー」への旅が始まろうとしている。

文・編集=秋山都

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