政策だけでは超えられない──文化という壁
TanやChow Kooのように、シンガポールでは起業を選ぶ女性が増えている。そして、彼女たちを支える環境も、アジアの中では良い。DellがDWENに合わせて発表した女性起業家の環境を評価する「Dell Women Entrepreneur Cities(WE Cities)Index」で、シンガポールは21位。前回は8位でトップ10に入っていた。今年は順位こそ下がったが、依然としてアジアの都市の中では上位となっている。
DWENのオープニングでスピーチを行ったシンガポール政府 文化社会青年大臣のGrace Fuは、シンガポール経済における女性を次のように語る。「高いスキルを必要とする高報酬の仕事に就く女性が増えている。シンガポール証券取引所の上位100社における女性取締役の数はこの4年で倍増した」。会計士や金融ブローカーなど一部の職種では、女性の平均収入が男性のそれを上回る現象も出てきているという。
Fu自身は2015年に初の女性大臣として入閣したが、現在は女性は4人。そのうちの1人は2017年に同国初の女性大統領に就任したHalimah Yacobだ。
女性の活躍という点で目覚ましい成果を遂げているシンガポールだが、簡単に成し遂げられたのではない。Fuは「アジアの国はそれぞれ異なり一口にくくれないが、アジアの価値観に社会的偏見が組み込まれている」と指摘する。女性は家庭に入るので学業は必要ないなどの考え方だ。「このような社会的規範は、政府の命令で変わるものではない」とFu。政策ありきでは進まないという見解を示した。「企業が主導して初めて労働者市場に変化が出てくる。これが経済における変化を加速するのではないか」──企業は政策を最大活用して変えていくこともできるし、政策を活用しなければそのままということになる。
「女性に関する社会的認識をどうやって変えていくのか、女性はどこで・どのように働くべきか、そもそも女性は働くべきなのか。政府が全ての解決策を持っているわけではない」とFuは述べた。
シンガポール政府 文化社会青年大臣のGrace Fu