「公務員にはクリエイティビティがない」と言われることも多い。その前提を覆すのが、岐阜市役所の川那賀一だ。電通SCP塾賞とのW受賞を果たし、その選定理由として「保守的で画一的になりがちな公務員の業務についてクリエイティブな視点を投入することで、新しい風を吹かせようという気概に刺激を受けた」という言葉が贈られた。
「公務員×アート」を打ち出し公務員のイメージを変える川那賀一さん
川那はこれまでも公務員を「ソーシャルアーティスト」と定義し、さまざまな活動を行ってきた。ソフトバンクに2年間出向し、本籍のある岐阜市との連携を図りながら社会課題の解決に奔走。「Pepper社会貢献プログラム」により全国的なプログラミング教育機会を提供してきた。
また「アート×公務員」をテーマとして、公務員のクリエイティビティを解放させることにも力を注ぐ。社会に新しい価値を仕掛けたいと思う人を応援する場として「よんななアーティスト会」を立ち上げたり、横瀬町(埼玉県)に提案採択された「よこぜプレゼン部」を実行したりするなど、多彩なアーティスト活動をしてきた。
すべての住民に伝わるデザインを
「クリエイティビティ」といえば、埼玉県三芳町の佐久間智之も負けてはいない。それまで読まれずにゴミ箱に捨てられていた「広報みよし」を、住民に愛される広報紙へと改革。写真撮影やデザイン、企画といったものを独学で習得し、全国広報コンクールにおいて内閣総理大臣賞を受賞するなど華々しい結果を残した。
その知識活用は広報紙や公式サイトだけに留まらない。見やすい文字として開発された「ユニバーサルデザインフォント」を、三芳町役場と町内すべての小中学校に導入。すべての住民に情報が伝わるようなデザインを提案してきた。
独学で習得した知見を講演・出版で全国に共有する佐久間智之さん
岐阜市役所の川那も、埼玉県三芳町の佐久間も、どちらも「クリエイティビティ」を発揮して地域社会の課題に向き合い、結果を残している。我々はステレオタイプな「公務員像」に毒されがちであるが、全国約270万人の地方公務員にはまだまだ多種多様な人物が存在している。
公務員にも「個」の時代が到来
企業からの特別協賛社賞を、唯一2社から受けたのが尾道市役所の倉田麻紀だ。倉田が行ってきたのは、まちづくりの担い手を発掘するための「若者チャレンジ講座」に代表される、市民のエンパワーメントだ。
倉田について、まず特筆すべきことは、そのスタンスだ。彼女が町を歩くと、すれ違う人から「マキさん、マキさん」と声がかかる。地域に飛び出すことに躊躇する公務員も多いなか、積極的に地域に飛び込み、市民の信頼を得てパートナーシップを築いてきた。
休日に地域のイベント「荒神堂路地祭」にスタッフとして参加する倉田麻紀さん(写真中央)
そんな本人の口癖は「私は何も出来ていない。周りの人がすごいだけ」。とにかくひたすら黒子に徹し、自分に光が当たることは好まないのだという倉田を“すごい!地方公務員”だと推薦するのは、同じ尾道市の公務員ばかりではない。11の市区町村にいる地方公務員たちが連名で推薦文を書いた。以下、一部を抜粋する。