まず、2050年までに海洋プラスチックゴミによる新たな汚染をゼロとすることを目指し、発展途上国の廃棄物管理、海洋ゴミ回収及びイノベーション推進の能力強化に助力していくという「大阪ブルーオーシャンビジョン」の宣言。もうひとつは、同じく首脳宣言に盛り込まれた、海洋の持続可能性にとって深刻な課題である「IUU漁業(違法・無規制・無報告漁業)の撲滅」である。
さらに、G20大阪サミットに先立って行われたG20福岡 財務大臣・中央総裁会議(6月8〜9日)では、食事提供の一部で持続可能な水産物として水産資源のレーティングプログラムであるブルーシーフードガイドから食材が選択され、会場にも同ガイドのパネル展示やパンフレット設置も行われた。
この料理監修を任されたのが、パリのレストラン「Sola」の吉武広樹シェフ。彼はブルーシーフードガイドのスキームオーナーに事前に問い合わせ、九州の食材を使うという条件のなかで、サステナブルなシーフードとして何を調達すべきかを検討したという。吉武氏は、「出席者からの質問も多く、海洋環境問題への関心の高さを肌で感じた」と言う。
今回のG20大阪サミットとG20福岡 財務大臣・中央総裁会議の全体を通して、海洋環境に注目が集まり、世界第6位のEEZ(排他的経済水域)を持つ日本が、リーダーシップをとることができたのは大きな成果ではなかっただろうか。
太平洋・島サミットでも主催
そんななかで、注目に値するのは、G20大阪サミットで、安倍昭恵総理夫人が主催した配偶者プログラムだ。同プログラムのメインイベントとして、海洋環境に関するシンポジウムを開催したのだ。シンポジウムのプロデュースと当日のモデレーターを担当した笹川平和財団海洋研究所の角南篤所長が次のように語る。
「海洋環境に関するシンポジウムを開催したのは、サミット2日目の午前中でした。各国首脳の配偶者、約20名が参加され、高校生、小学生の海に関する活動発表に熱心に耳を傾けられました。さらにカナダ、トルコ、韓国、インドネシア、ベトナム、タイなどの配偶者の方が、各自それぞれの国の海洋環境に関する取り組みを紹介し、その重要性を訴えられました。
海は世界を繋げるひとつの海ということで、海洋環境の保全は国際協力なしにはありえない。とくに女性たちによるこうした取り組みの重要性、女性の世界的ネットワーク形成の必要性を唱える意見も出されました。私からも世界の女性リーダーたちの間で、海洋環境に取り組むネットワークをつくる動きがあることも、併せて紹介しました」
実は、昭恵氏は、G20大阪サミットに先立って、2018年5月18日、19日と福島で開催された第8回太平洋・島サミット(PALM8)においても、配偶者プログラムとして、海洋環境シンポジウムを主催し、成功させている。
そのとき、モデレーターを務めさせていただいた筆者も、配偶者プログラムといえばその国の伝統芸能を鑑賞するものという固定観念を覆され、各国の配偶者の方々の活発な発言と、専門性を帯びた意見交換に感動した覚えがある。