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2019.09.14

あなたは耐えられる? カンタス航空が19時間フライトに挑戦

(James D. Morgan/by Getty Images)


カンタス航空は、今回のシドニー〜ニューヨーク間のテストフライトを通じて、12月までにこのルートを商業路線として正式に設置するかどうかを決め、決定された場合には、航続距離が20時間を優に超えることができるボーイング 777Xまたはエアバス A350Sを購入する予定だという。そして、ニューヨーク便のほかにロンドン便も検討中だ。

貨物便ではすでに20時間以上飛ばす便があり、技術的なハードルはすでにクリアしている。同社の役員であるアラン・ジョイス氏によると、あとは、乗客の飛行体験で十分な快適性を維持できるかどうかのところに焦点が絞られていたという。

乗客の快適性が維持できなければ、商業路線としての寿命は危うい。たとえばシンガポール航空はニュージャージーからシンガポールまでの約18時間路線を持っているが、この路線は2004年に一度就航し、その後、取りやめと再就航を繰り返している。ウィキペディアによれば、理由のひとつが商業的に不十分だったということであり、これは、乗客が、飛行時間が長すぎて敬遠したということが理由だと推測できる。つまり、ますますポイントは技術力ではなく、乗客の体力だということになる。

東京がアジアの玄関だった時代は昔

エアフェアウォッチドッグブログによると、このほか、17時間クラスの飛行路線は、ニュージランドのオークランドからカタールのドーハまで(17時間40分)など複数飛んでいるが、距離と時間が必ずしも正確に比例するわけではないのは風や天候の影響、そして飛行禁止区域の回避などが、公式発表距離に考慮されていないからだという。

40年前には、東京からヨーロッパやアメリカに行くのに、アラスカのアンカレッジを経由して給油をしていたということを考えると隔世の感があるが、航空機の燃費がこのように伸びてくれば、今後は、乗客の快適性さえ担保されれば、航空路線はまさに需給バランスで設定されていき、長時間フライトが20時間を超える日もやって来そうだ。

そして、これは、航空会社だけでなく、各空港管理会社と運輸行政の国際競争をも意味する。アメリカからのアジア路線の多くが、成田へ一旦着陸してから中国やシンガポールなどに飛んでいた時代(東京がアジアの表玄関だと胸を張っていられた時代)は遠く20世紀のものとなり、航空各社はニーズのある場所に直接航空機を降り立たせるし、各空港もまた、新路線を獲得するには顧客体験への貢献度をますます問われそうだ。

香港国際空港は、税関を出ると、すぐに大きなロビーの向かい側に市内への高速列車が滑り込んでくるし、アメリカ中西部のシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港では、空港内に教会(どの宗教・宗派も歓迎)もある。ロサンゼルス空港が国際線ターミナルに投資を集中させてアップグレードしたことは、以前にこのコラムでも触れた通りだ。いままさに、航空業界は総合力が試されているのだ。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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