同国では、およそ4年の間で3度目となる選挙を行おうとしていた。就任したばかりのボリス・ジョンソン首相は、進んで解散という以前と同じ過ちを犯そうとしていた。
ジョンソンは就任して以来、何の合意に至らなくても欧州連合(EU)を離脱する用意があると、公然と欧州のリーダーたちを脅してきた。彼らにとっての唯一の選択肢は、自らの考えを受け入れることだと主張してきたのだ。
これに対してEUは、離脱協定に関する再交渉の余地はなく、ジョンソンはそれを理解する必要があるとしてきた。だが、英国の愚かなリーダーは、EUからの「合意なき離脱」が自国にもたらす膨大な経済的損失を気に掛けていない。
英国の経済情勢は切迫している。先ごろ発表された8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、英国がすでにリセッション(景気後退)入りの寸前にあることを示している。住宅市況も悪化する一方だ。賃貸需要が減少していることで、大家の53.5%が空き部屋を抱えている。これは過去最悪の数値だ。
議員が社会を分断
こうした状況にもかかわらず、ジョンソンは何があってもブレグジット(EU離脱)を実現させる決意だ。EUのリーダーたちを脅すことは自らに有利に働き、離脱期限までにEUの同意を得ることを可能にすると見込んでいる。合意なきブレグジットがもたらす経済的な悪影響は、英国だけでなくEUにも及ぶと考えているのだ。
英国で現実に起きているのは、議員たちが過去3年間、無謀な政策によって国を分裂させてきたということだけだ。こうした不確実性は、企業にとっては重大な懸念だ。振り子が実際にどちらの方向に動くのか、国内の誰にも分からない。
有権者はすでに、ブレグジットを巡るドラマにうんざりしている。以前は友好な関係にあった欧州の各国も、完全に疎遠になっている。
ポンドはまだ下落?
ジョンソンは、国民が選択したことを実現しようとしているわけではない。あらゆる手段を使おうとしているだけだ。10月14日にも実施しようと試みた総選挙で首相が有権者に提供できた選択肢は、野党・労働党の党首ジェレミー・コービンと、合意なきブレグジットの2つだけだ。企業経営者らは、ビジネスに優しい政策を支持しないコービンも恐れている。
トレーダーにとっての不安定な状況は、今後も続くことになるだろう。現在の状況の結果として、英国の通貨ポンドは先ごろ、ブレグジットの是非を問う国民投票が行われたおよそ3年前以来の安値をつけた。
ポンドは今後も、非常に激しい値動きを続けるだろう。さらに下落することもあり得る。ただ、その場合でもトレーダーは、欲張ってショートポジションを取るべきではないだろう。下がりすぎた通貨は大抵、その後に反発するからだ。