観光関連企業の幹部らは、観光客の多くが旅先に与える影響について考えていないことが問題の一部だと考えている。アムステルダムのホテル、ワルドルフ・アストリア・アムステルダム(Waldorf Astoria Amsterdam)のロベルト・パイヤル総支配人は、観光客が自転車専用レーンを歩道として使用していることにより、地元住民が不満を募らせていると指摘した。
イタリア旅行を企画するICベッラージョ社のアンドレア・グリスデールCEOは、オーバーツーリズムの典型例であるベネチアではマナーの悪い観光客が状況をさらに悪化させていると語る。
「観光客は橋の上に座り込んでサンドイッチを食べて、他の人が橋を渡るのを邪魔している」とグリスデール。地元当局は訪問客に罰金と退去処分を科すことを計画しているほか、大きなクルーズ船の波止場を歴史地区から離れた場所に移す予定だ。こうしたクルーズ船は、ピーク時には毎日3万人以上の観光客を同市に運んでいる。
バルセロナの観光奨励コンソーシアムであるバルセロナ・トゥリズマ(Barcelona Turisme)のディレクター、メルセデス・ガルシアによると、同市当局は都心での新たなホテルの開発を停止するとともに、イベントの場所を人の少ない地域に移すなど、新たな観光地を創出・奨励することに焦点を当てている。
ペルーのマチュピチュでは、地元当局が観光客過多に対処する仕組みとして、チケット所有者は指定された時間帯に入場し、決められた順路を通って、滞在を4時間以内に終わらせなければいけないという規則を設けた。
観光客向けサービスを提供するメトロポリタン・ツーリング(Metropolitan Touring)のゼネラルマネジャー、アロンソ・ロイエロは、一つの解決策として、観光客が魅力を感じるようなペルー国内の他の観光地についての認知度を向上することがあると述べている。
ただ、観光客のマチュピチュ訪問時間と方法を変えただけでも、当局のチケットの売り上げは1日に4600枚から6000枚まで伸びたとロイエロは語る。
旅行会社バーチュオーソ(Virtuoso)のマシュー・アップチャーチ会長は、観光収入は地元経済で重要な役割を果たしていることが多いため、正しい解決策を考えることが重要だと述べている。
アップチャーチによると、オーストラリアのグレートバリアリーフでサンゴ礁が死滅していることが報じられた結果、まだサンゴが健康で環境への悪影響を心配せず訪れることができる地域への観光客も減ってしまったという。こうした地域では、観光収入が多くの仕事を支えている。
贅沢な旅をする観光客は、より少ない人数で多くの売り上げを出すため解決策の一部になるかもしれないが、結局のところ、正しい解決策は地元のコミュニティーから出るものだとアップチャーチは考えている。
一方で観光客側としては、少し時間をかけて何が許されるのかを理解することが役に立つだろうとワルドルフ・アストリアのパイヤルは述べている。彼によると、欧州を最近襲った熱波により各地で最高気温の記録が更新された際、歴史的建造物である噴水に入って涼をとる観光客がいたことに地元民は衝撃を受けた。