ビジネス

2019.09.10 07:00

オルビスはなぜ蘇ったのか。急成長の仕掛け人・41歳社長が抱いた反骨精神

オルビス株式会社代表取締役社長 小林琢磨氏


日本の大企業にこそ、活躍のチャンスはある
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こうして小林氏は、転職未経験ながら、グループ内で自ら手を挙げ、重要なポストにチャレンジし、成果を出してきた。若くして経営に携わる者の多くは、スタートアップを創業するか、経営者の子息や子女、あるいはコンサル会社やファンド会社から事業会社に転職するといった例が目立つが、プロパー社員のキャリアパスとしては異例と言えよう。小林氏は自身のキャリアを、こう表す。

「一般的な転職は一度もしていないけど、ある意味、転職よりも幅広く仕事を変化させてきたかもしれない。意識的に『新しい価値観に触れてみよう』と考えて、行動できるかどうかだと思うのです。少なくとも僕自身はそれを意識してきました。

はじめは何も考えていなかったけど、仕事に取り組むようになって、こんなに面白いビジネスはないと思えるようになった。化粧品って、2、3カ月に一度買い換えるような消費財にもかかわらず、『ブランドビジネス』なのです。単純に価格や機能性を比較されるだけでなく、いかに付加価値を感じてもらえるかがカギとなる。そうやって、一個人としての興味が仕事とつながってくると、どんどん楽しくなってきます」
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「好きなこと、得意なことを仕事に」「好きだからこそ夢中になれる」──。そんな言葉が世の中を飛び交うが、学生はおろか、もう何年も働いている社会人ですら、自分が何を好きなのか、どんなことが得意なのか、明確にわからないままの人も多いのではないだろうか。

「置かれた場所で咲く」と覚悟を決めるほど開き直りもできないが、まったく新しい世界へ飛び出すのは気が引ける。そもそも、自分が何をしたいのか、わからない……。それでも、日々直面する出来事に対し、何がイヤで、何にワクワクするのか。自分の心の動きに耳を傾けてみるのは、一つの方法なのかもしれない。

小林氏は語る。

「僕は、運が良かったんだと思います。いまや経団連やトヨタのトップですら『年功序列を維持することはできない』と言う時代。結果論だけど、メガベンチャーで意識の高い優秀な人ばかりがいるところへ入るよりも、伝統的な日本のメーカーに入ったほうが、競争率は低いかもしれない。これから、組織を変えられるチャンスも多いんじゃないかな」


小林琢磨(こばやし・たくま)◎1977年生まれ。2002年(株)ポーラへ入社、2010年にグループの社内ベンチャーとして立ち上げた(株)DECENCIA社長へ就任。2017年オルビス(株)のマーケティング担当取締役、2018年に代表取締役社長に就任。同年、新生オルビスのビジョンを掲げ、「ORBIS U(オルビス ユー)」をリニューアル。翌年1月には、「飲む」次世代スキンケア「ORBIS DEFENCERA(ディフェンセラ)」を発売。2029年への長期目標を見据え、「ここちよくいることで生まれる美しさ」という本質的な体験価値を模索しつづける。ポーラ・オルビスホールディングス上席執行役員を兼務。早稲田大学大学院MBA。

取材・文=大矢幸世+YOSCA 企画・編集=FIREBUG 写真=栗原洋平

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