ビジネス

2019.09.10

オルビスはなぜ蘇ったのか。急成長の仕掛け人・41歳社長が抱いた反骨精神

オルビス株式会社代表取締役社長 小林琢磨氏

台頭するD2C(Direct to Consumer)ブランドには、「創業者の強い思い」がプロダクト開発のモチベーションとなっているものも少なくない。

「高品質でリーズナブル、かつデザイン性に優れたものがなかった」「既製品では合うサイズがなかった」「サスティナビリティに配慮されたものをつくりたかった」──その思いやプロダクトの背景にあるストーリーがさらに顧客の共感や支持を集める。

だが一方で、新卒入社から代表に上り詰め、顧客の支持を集める“強い”プロダクト開発を指揮した経営者もいる。2018年1月にオルビス代表取締役社長に就任した小林琢磨氏だ。社長就任以来、組織改革を推進し、エイジングスキンケア『ORBIS U(オルビス ユー)』シリーズ、“肌のトクホ”『ORBIS DEFENCERA(オルビス ディフェンセラ)』など、立て続けにヒット商品を世に送り出した。

外から見極めた「オルビス」の本質的な強み

2つの商品の根底にあるのは、オルビスがリブランディングによって打ち出したブランドメッセージ、「ここちを美しく。」だ。肌が持つ力を引き出すシンプルなスキンケアを、「ここちよくいることで生まれる美しさ」と表現した。それはオルビスが87年の創業当初から持っていた哲学でもあった、と小林氏は語る。

「バブル経済の真っ只中、華美でリッチなものが好まれていたにもかかわらず、そのアンチテーゼとしてオイルカットでシンプルなスキンケアを提案した。そして、90年代のデフレ経済下で他社に先駆けてダイレクトマーケティングをはじめ、徹底的に顧客本位の商品づくりを行なった。客観的に見ていて、素晴らしいものがあると感じていました」

なぜ、小林氏がオルビスの本質を見極め、1年半という短期間で組織改革を大きく進捗させることができたのか。そしてなぜ、創業当初ブランドが持っていたマインドを、いま蘇らせることができたのか。そのモチベーションは、若手時代の原体験にさかのぼる。



彼がオルビスのグループ会社であるポーラ化粧品本舗(現ポーラ)へ入社したのは、2002年。2010年に社内ベンチャーのDECENCIA(ディセンシア)社長へ就任。2017年1月にオルビス取締役へ就任する前から、グループ会社の一つとしてオルビスの動向をうかがっていたという。「ここ数年は売上が伸び悩み、自信を失っているように見えました。2000年代の破竹の勢いを知っているからこそ、非常にもったいないと思っていたのです」
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取材・文=大矢幸世+YOSCA 企画・編集=FIREBUG 写真=栗原洋平

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