ビジネス

2019.09.09

ヒットの落とし穴を超えて。成熟企業の脱皮に挑むオルビス「3つの視点」

オルビス株式会社代表取締役社長 小林琢磨氏


「華美な化粧品が主流だった時代に、『オイルカット』や『簡易包装』といった、新たな選択肢を打ち出したのは本当にすごいことです。オルビスの本質的な価値を捉えたとき、化粧品に対しても、また女性たちの生き方に対しても、いろいろな考え方があっていい。頑張っている女性にもっと輝いてほしいと『女性活躍』をひとくくりにするのではなく、既にもう充分頑張っている人たちが、少しでも心地よくいられるように多様な価値観を提示できる存在であることが、オルビスがもともと持つフィロソフィーだと考えました」

そしてそのフィロソフィーのもと、リニューアルや開発を進めたのが、「アンチエイジング(加齢に抗うこと)」ではなく、「スマートエイジング(自分らしく年を重ねること)」を象徴したスキンケアシリーズ「オルビス ユー」。そして、日本初発売の「肌の水分を逃しにくくする機能」が認められた特定保健用食品「オルビス ディフェンセラ」だった。



とりわけ、「オルビス ディフェンセラ」は広告戦略にもそのチャレンジングな姿勢が表れた。モデルの黒田エイミと男性である俳優の三浦春馬を起用したのだ。だが、小林氏はそれもあくまでフィロソフィーを踏襲したもので、決して目先の手段に走ったわけではないと語る。

「これから価値観が多様化していけば、小手先のマーケティングでは通用しなくなってくる。ディフェンセラのコンセプトは『ボーダーを越えていく』というもの。外からのケアだけではなく“飲む”スキンケアが実現すれば、化粧品と食品、あるいは女性や男性といった固定概念さえ超えていける。非常にチャレンジングで本質的な価値を示したプロダクトだと思っています」

「時代が変わっていく以上、その時代に合わせた手段を適切に選ぶ必要があります。それが過去の『簡易フィルム包装』や『オイルカット』であり、昨今の『オルビス ユー』や『ディフェンセラ』だったわけです。規模が大きくなればなるほど手段に固執しがちになりますが、そこは積極的に変えて『進化』させていくことが求められます。大きく変化しているように見えて、実は根底にあるオルビスの『フィロソフィー』は変わらないのです」
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取材・文=大矢幸世+YOSCA 企画・編集=FIREBUG 写真=栗原洋平

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