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2019.09.09 07:00

ヒットの落とし穴を超えて。成熟企業の脱皮に挑むオルビス「3つの視点」

オルビス株式会社代表取締役社長 小林琢磨氏

かつてヒット商品を数多く開発していた日本のメーカーだが、その「成功体験」にとらわれるあまり、新たなヒットを生み出せず、苦心しているところも多い。

そんななか、1年半という短期間で組織改革を行い、立て続けにヒット商品を生み出した企業がある。化粧品ブランド「オルビス」だ。2018年10月にリニューアルした『ORBIS U(オルビス ユー)』シリーズは、発売から約2カ月で販売累計67万個を突破し、7月時点で311万個を記録。2019年1月に発売した“肌のトクホ”『ORBIS DEFENCERA(オルビス ディフェンセラ)』は発売から6カ月で販売累計約45万個、約14億円の売上を記録する爆発的なヒット商品となっている。

デフレ期の成功体験が「落とし穴」に

そのヒットを牽引したのが、オルビス株式会社代表取締役社長の小林琢磨氏だ。小林氏は2002年にポーラ化粧品本舗(現ポーラ)へ入社し、2010年にDECENCIA(ディセンシア)社長へ就任。2017年1月にオルビスへ異動した後、2018年1月に代表取締役社長に就任した。社長就任からわずか1年半で組織改革の成果を上げた形だ。

80年代後半、90年代前半のバブル期に他社がこぞって華美な化粧品を打ち出すなか、オルビスは「オイルカット」や「簡易包装」「通信販売」といった、まったく新しいスキンケア化粧品の方向性を示した。これが90年代後半以降のデフレ経済による消費停滞期の消費者の心をつかみ、爆発的なヒットを記録。以降、通販化粧品市場の躍進を象徴する存在となった。



だが反面、そこに落とし穴があったと小林氏は指摘する。「事業成長期から成熟期にかけて、CRM(顧客関係管理)を活用して顧客の購買データにフォーカスし、合理化を進めていくことで、既存顧客に継続的に購入いただけるよう検証と実践を繰り返してきました。徹底したデータドリブンで売上を伸ばしてきたことは確かですが、一方で削ぎ落とされ、失ってしまっていたものが大きく3つありました。それは、『フィロソフィー』と『チャレンジ』、そして『全体視点』です」

フィロソフィーを体現するチャレンジングな商品

オルビスの組織改革は、「この3点を明確にして伝えていくこと」を徹底した。小林氏は社長就任後、組織改革のキックオフとして「自信を失っているように見えた」という全社員との面談を行い、ともにプロジェクトを推進するメンバーを集めた。そこで求めたのは「未来志向」と「オープンマインド」だ。

「当時のオルビスは、成長期が終わり業績が伸び悩んでいました。緩やかに衰退の危機を迎えようとしていたのです。今後新たなチャレンジをするためには、既得権益を打ち破り、リスクを取らなければなりません。自分を守るために過去や経験についてばかり話すのではなく、これからオルビスをどうしていきたいのか、そのためにどうしたいか、と自分の言葉で未来を語れる人を選びました」。そして結成したプロジェクトチームのもと、新たに定めたブランドメッセージが「ここちを美しく。」だ。
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取材・文=大矢幸世+YOSCA 企画・編集=FIREBUG 写真=栗原洋平

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