ビジネス

2019.09.04 17:00

ネットフリックス流イノベーションの起こし方──創業メンバーが20年を振り返る

Gettyimages


顧客と同じように自分たちの製品を使い、知ることが小さなイノベーションにつながった例として、シリーズのエピソードが終わり、次のエピソードを観るときに、最初のイントロ音楽をスキップするというサービスをあげた。「ある従業員のアイディアから生まれた。技術やビジネスの視点では考えつかない。小さなことが体験を変え、素晴らしいサービスになる」とローは語る。
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ロイヤリティ(継続率)については、「アカウントに数人分を追加できる」ようにしたことが最大のポイントと分析する。自分のアカウントで子供や親などがネットフリックスでコンテンツを視聴するようになれば、解約が難しくなる。追加分の帯域などのコストをオフセットしている、とローは述べる。

データ活用も重要な作業だ。「スタート当初に比べるとたくさんのデータがある。ユーザーは間もなく1億5000万人に達するところで、この人たちの視聴は毎日4000種類ものデバイスで1億時間ある。これを利用して、何を買い付けるべきか・制作すべきか、そして誰が楽しんでいるのかがわかる」


ネットフリックスの加入者は現在1億5100万人(講演時点では1億2500万人だった)。米国と米国以外の比率はほぼ半々で、米国以外の成長が牽引している
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毎日4000種類ものデバイスで1億時間以上コンテンツを視聴しており、ここから得られるデータの活用は重要だ。ネットフリックスは60ペタバイト以上のデータウェアハウスを構築しており、幹部、プロジェクトマネージャー、ビジネスアナリスト、ソフトウェア開発者と様々な役職の人がデータを分析しているという

ミスを恐れずに挑戦を続けること

そこまで話したあと、ローはネットフリックス成功のポイントを次のようにまとめた。「ミスを何度もした──もちろん、ミスをしたいという人はいない。ミスを恐れずに挑戦を続けることにコミットしなければ、イノベーションは生まれない」「成功すると知っていてスタートする人はいないのだから」。

一方で、カンヌ映画祭ではネットフリックスが制作した作品を映画と認めていないなど「まだ戦いはある」と述べた。

イノベーションというテーマについてローは、「明らかにイノベーションのチャンスがあるところがある」と伝える。「価格が下がり、ユーザーが継続して減少するなどビジネスが縮小傾向にある──これは、そのセグメントでイノベーションが起こっていないという兆候であり、チャンスだ」。ネットフリックスは成熟市場だったレンタルビデオでイノベーションを起こした。

そのネットフリックスは現在、何と戦っているのか? ローは”ライバルはどこ?”と聞かれた時に「睡眠」とヘイスティングスが述べたことを紹介する。アマゾンでもフールーでもない。人々の睡眠時間が減れば、もっとネットフリックスを使ってくれるという意味だ。

「失敗を恐れないこと。イノベーションは簡単ではない。たくさんのミスがあるだろう」とローは言う。そこで必要なのは、失敗を受け入れるカルチャー、失敗から改善するのを支援するカルチャーだとアドバイスした。

文・写真=末岡洋子

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