レンタルビデオ屋の最大手に提携を持ちかける
そうしてネットフリックスは、郵送でのDVDレンタル業をスタートする。だが、どうやってそんなサービスがあることを知ってもらうか? ローはブロックバスターに掛け合う。ブロックバスターはレンタルビデオ最大手で、いわば”ライバル”だ。
そんな彼らに自分たちがやっていることをみせ、5000万ドルで株式の50%を取得しないかと持ちかけたのだ。答えは「ノー」だった。なお、ブロックバスターから訪問を受けることが決まった時、「ローテクに見られたくなかった」ローたちは、郵便物を区分するマシンを米郵便公社から購入した。ところが、実際にマシンを動かしてみると封筒からDVDが破れて飛び出してしまったため、慌てて隠していたというエピソードも明かした。
ブロックバスターが自分たちのオファーを断ったことについて、ローは次のようにいう。「多くの既存企業が同じような反応をする──我々の方がこの業界やビジネスをよく知っているのに、なぜ投資する必要がある? やろうと思えば、我々の方がもっとうまくできる──という考え方だ」
提携を断り、そして倒産
エアビーアンドビーが登場した時に既存のホテル企業はどう思ったか? あるいはウーバーをハーツなどのレンタカーはどう見ていたか? ブロックバスターは最盛期に全米9000以上の店舗を構えていたが、2013年に倒産を迎えた。「ブロックバスターはチャンスを逃した」とローは言う。
ネットフリックスは「体験」を変えることにこだわった。DVDの貸し借りだけではない。どうやって顧客と1対1の関係を構築するかも課題だった。そして始めたのが、他のユーザーの評価に基づいたおすすめを提案する「レコメンモデル」だ。
やりたかったのは、レンタルビデオの店員や友達が”この映画いいよ”って薦めるようなこと。クリップボードでデータを集めるという手法だったという。
「ユーザーがどんな映画の種類やTVシリーズが好きかを理解し、簡単に見つけられるようにする」というのが狙いだ。2000年から「ネットフリックスは早期からパーソナライズに挑戦していた」とローは胸を張る。
現在ならパターン認識などの洗練された技術や手法があるが、当時は少なかった。「父親に『ポカホンタス』のレコメンはやめてくれないか? など、苦情もたくさん届いた」と苦笑する。
ネットフリックスはパーソナライズ手法が少なかった当初から、おすすめ(レコメンド)を試みていた