AIがホテルの料金を決める。「空」が資金調達

空代表取締役 松村大貴


この技術を用いてホテルや旅館の価格最適化を支援するサービスを考えたが、松村はホテル業界で働いたこともなければ、知り合いもいない。そこで、LinkedInでホテルに勤務し、価格設定を担当していると思われる人に積極的にアポイントメントを取り、話を聞きに行った。ホテル業界の人々と話していくうちに、業界内の知識も増え、課題を認識するようになった。

それは、価格設定が属人化していること。つまり、各担当者の経験や勘、先輩からの教えで価格を決めていたことだ。エクセルを使い価格設定を行っている従業員もいたが、その方法はバラバラだった。

「我々の顧客のほとんどがビジネスホテルやシティホテルさんです。そういったホテルに共通している課題は人手不足です。価格設定のプロフェッショナルが足りていない状況で使っていただけるサービスになるためには、極力シンプルにし、短時間で仕事が終わるようにすること」(松村)と語る。

カスタマーサクセスに注視

創業2年目の夏、アクセラレータプログラムに参加したことも大きかった。「アイデアを検証し成功率を少しでも上げるためには何をすれば良いか学んだ」という松村は、初の顧客から多くのフィードバックを得た。

そこから同社はカスタマーサクセスを重視し、顧客の声をトリガーに事業状況を検証するスタイルに変化した。カスタマーサクセスをより重視するため、1年半前に専門の部署を立ち上げ、松村も参加した。開発チームやデザインチームのメンバーも意図的に顧客と接触する機会を増やすようにしている。

「Price」「Product」「 Promotion」「 Place」はマーケティングの基本と言われている。「Price以外は、ひとつの産業としてテクノロジーが浸透している。ホテル業界を筆頭に、世の中のすべての業界、モノやサービスが売買されるタイミングで必ず値段はついているにもかかわらず、価格設定は属人的に行われ、テクノロジーが浸透していない。

だからこそ、価格設定に必要なソリューションを提供したいし、PriceTechは今後大きく伸びる可能性を秘めている。PriceTechのリーディングカンパニーを目指し、売る側、買う側の関係を良くしていきたい」とその温和な表情とは間逆に、力強く将来のビジョンを松村は語った。

文・写真=本多カツヒロ

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