AIがホテルの料金を決める。「空」が資金調達

空代表取締役 松村大貴

訪日外国人観光客の増加や2020年東京オリンピックを前に各地でホテルの建設ラッシュだ。主要9都市の2019年~2021年に開業予定の客室数は、この1年で2.5倍増加(CBREのレポートより)。しかし、ホテル業界は人手不足に悩まされている上に、宿泊料金を決定するのは、各従業員の長年の経験や勘に頼ってきた。

AIを活用したホテルの料金設定サービス「MagicPrice」を開発、提供する空は9月4日、UB Ventures、グロービス・キャピタル・パートナーズから約3億円の資金調達を実施したことを明かした。

今回の資金調達により「MagicPrice」の事業や人材を強化するとともに、グロービス・キャピタル・パートナーズから渡邉佑規が社外取締役に就任することも合わせて発表した。

空は2015年創業。PriceとTechnologyを組み合わせたPriceTech企業としてデータ分析をもとにした価格最適化サービスを事業とし、2016年からホテルのレベニューマネジメントを支援する「MagicPrice」を提供している。

「MagicPrice」は、自ホテルの予約状況や競合ホテルの販売状況、周辺のイベントなどを予約システムやネット上から自動で収集し、おすすめの価格設定を担当者に提案する月額制のサービス。すでにワシントンホテルやベストウェスタンホテルなどが導入している。

未経験のホテル、旅館業界へ

代表取締役の松村大貴は、新卒でYahooへ入社。主にマーケティングやアドテクノロジーを担当した。2015年、学生時代から起業することを目指していた松村はYahooを飛び出し同社を設立。「やりたいことへまっすぐに進まない後悔のほうがリスキーだと思います。自分がやれることがあるかもしれないときにチャレンジすることは自然なことでしたね」と松村は当時を振り返る。

しかし、事業ドメインやアイデアが明確だったわけではなかった。会社設立から1年ほどは、ピボットを繰り返した。そして前職の経験から「プライシングをテクノロジーで支援する」アイデアを思いつく。前職で携わっていたアドテクでは、広告料金をユーザーのセグメントや属性に応じて、広告や価格をAIで算出していた。
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文・写真=本多カツヒロ

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