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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

Jay-Z(Getty Images)

米エンタメ界に、著作権ビジネスの新潮流が生まれている。楽曲の再生や複製に対して発生するライセンス料を細分化し、オークションで売買するという仕組みが構築されているのだ。


「正直に言うと、この曲を落札するまで、カーディ・Bという名前を耳にしたこともなかった」

こう明かすのは、ダラスの小さな投資顧問会社で働くアレックス・グイヴァだ。2018年に偶然、楽曲著作権の競売を行うサイト「ロイヤリティ・エクスチェンジ」を見つけたグイヴァは、新進ヒップホップスターが歌う「ボダック・イエロー」の権利の一部を、11万ドル(約1200万円)で競り落とした。音楽分野への投資は初めてだったが、年換算15%の利益を手にしたという。今では、自身の運用資産の約1割を音楽ロイヤリティ関連に投じている。

音楽ロイヤリティの規模は、全世界で280億ドル(約2兆9940億円)に上る。ロイヤリティ・エクスチェンジは、DIY型投資を好むエンタメファンに、そんな巨大市場に少額投資で参入できる方法を提供してきた。例えば、ジェイ・Z、ビヨンセ、ジャスティン・ティンバーレイクの3人が参加した楽曲には11万3400ドルの値が付いたが、1年間で22%にあたる2万5000ドルの利益をもたらした。一方で、わずか2万2300ドルのK-POPの楽曲集が、最初の1年で26%にあたる5900ドルという驚きの利益を生んだ事例もある。

このようなプライスポイントは、過去にはまったく見られなかった現象だ。これまでは、楽曲権利は数千から数億ドルで丸ごと売買するのが一般的で、権利を細分化して切り売りしたり、1曲を数%単位で取引したりすることなどなかったからだ。

ちなみにここには、映画などでの楽曲再使用料、印税、特許使用料等も含まれる。また、スタートアップへ投資する場合と違って適格投資家の認定を受ける必要がなく、購入にかかった支出は複数年かけて償却できるため税制上もかなり優遇される。

ロイヤリティ・エクスチェンジは、出品者に課す手数料(通常は約15%)および将来的なロイヤリティ管理料をカバーするため、1回のオークションにつき500ドルを徴収し、かなりの利益を得ている。シンジケートに関しては、ヘッジファンドと同様のキャリーを取る一方で、追加料金は課していない。つまり「儲かるビジネス」なのだ。同社は16年以降の取引で6000万ドルを売り上げているが、その内の760万ドルは、オークションの成果により19年第1四半期だけで実現した数字だ。

音楽出版社のカーリン・アメリカ社を率いるキャロライン・ビーンストックは言う。「音楽ロイヤリティは株式市場やインフレ、金利などに左右されることがなく、年がら年中お金になるのです」

ただし、利回りを追求するならリスクは付きものだ。ポピュラー音楽の動向はまったく予測不可能だし、どんなヒット曲でも人気のプレイリストから転落すれば、権利収入はあっという間になくなる。

文=ザック・オマリー・グリーンバーグ 翻訳=荒川信次

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